撤退戦のノウハウを蓄積して欲しい

4403 is written:教員免許更新制度が2010年度限りで廃止にで知った記事。

教員を続けるために10年に1度大学などで講習を受け修了することを義務づけている教員免許更新制をめぐり、文部科学省の政務三役は13日、10年度限りで廃止する方針を固めた。制度は今春始まったばかりだが、現場にはかねて「教員としての技量向上に効果があるかどうかは不透明」「ただでさえ忙しい教員がさらに疲弊する」という批判がある。文科省が同日開いた有識者との会合でも批判的な意見が強く、制度を続ける必要性がないという判断を固めた。

文科省は、現在の制度下で講習を受講しなくても免許が失効することがないよう、11年1月の通常国会で関係法令を調整する考えだ。

教員免許更新制は、安倍晋三政権の目玉として設けられた教育再生会議などが提案。幼稚園から高校までの教員が対象で、制度化に当たって文科省は「最新の知識技能を身につけてもらうことが目的」と説明してきた。

ただし、現場には不満も多く、民主党は今年7月、無駄な事業を洗い出す「事業仕分け」の中で、廃止すべきだとの結論に至った。

一国民としての観点からすると、一度政府が決めて運用を始めたことでも適切でないと判断したならば止めるということはとても歓迎するべきところ。このように一度政府が決めたことでも適切度に応じてやり直しができるというのは素晴らしい。一方で、広義の意味で教育関係者であるものの観点からすると、そんな2年程度で廃止するような制度をそもそも作るんじゃねぇという気を抑えることができない。

民主党政権になり、自民党が始めた事業を止めることが多くなった。当然、民主政権が終わり自民政権(あるいはその他の政権)になったときには同じように事業の停止が発生することになるので、これを良い機会として官公庁および国会、大学を始めとした独立行政法人および準公共団体には、このような撤退戦のノウハウを蓄積して欲しい。

撤退戦のノウハウを貯めるための第一歩は、事業停止により不利益を被った人がちゃんと不利益を被ったことをアピールすることだと思う。今回の教員免許更新制度で言えば、文科省の指示にしたがい、実際に教員免許更新講習に参加した人たちが被った不利益をちゃんと補填してあげて欲しい。なぜならば、典型的な正直者がバカを見るの構造になっているためだ。律儀に教員免許更新講習に参加するような人は基本的に真面目な教員であるわけなので、この人たちがやる気をなくしてしまうのはよくない。なので、講習費用の60%くらいを国から返還してあげてほしい(100%でないのは、講習を受けて何らかの知識を獲得しているため)。

法律や政府の通達に真面目に従った人が事業の停止により馬鹿をみることが続くと、法律や政府の通達に従わない方が有利になり、長期的には日本が混乱するようになる(あるいは、非効率になる)。これは、政府としても、国民としてもうれしくないこと。なので、法律や政府の通達に真面目に従った人が事業の停止により馬鹿をみないようにするべき。

また、この観点から、われわれは、法律や政府の通達に真面目に従った人が事業の停止により不利益を被った人が、政府やマスコミに対して不利益を被ったことをアピールしたとき、これを安易に非難してはいけないと思う。

一方で、「何が悪かったのか」も良く分析してほしい。目的が悪かったのか、方法が悪かったのか、運用が悪かったのか、また、どこの委員会や部署の決定だったのかなどをはっきりさせてほしい。生じた損害の責任を法律の決定者や各委員会、部署の担当者にとらせるようにするとまともな調査や分析ができなくなるので、責任の追求はしないこととして、とにかく調査と分析をきっちりしてほしい。

今回の例でいえば、教員免許更新講習の元となった問題点自体はまともで、方法と運用がまずかった(問題を解決できる方法になっていなかった)のだから、方法と運用について調査と分析をしてほしい。教員免許更新講習のすべてが悪かったわけでなく、メリットとデメリットを比較した場合にデメリットの方が大きかったので廃止したということをぜひ明らかにしてほしい。