岩田 規久男, 景気ってなんだろう、世界同時不況、日本銀行は信用できるか

「景気ってなんだろう」が2008年10月、「世界同時不況」が2009年3月、「日本銀行は信用できるか」が2009年8月。岩田先生の日銀に対する批判がどんどんと直接的になっていくのが面白い。

「景気ってなんだろう」の主たるポイントは「景気と不景気とは何を示す言葉か?」という素朴な疑問を丁寧に説明している。特に案外イメージの良いデフレーションと思い切り悪いイメージのインフレーション(物の値段が上がる=お金の価値が下がる)が家計にどう影響するかを判りやすく説明している。そして、小さいインフレ率のインフレーションを維持するのが景気にとって良いことを説明している。

「世界同時不況」では、何でアメリカで起きたサブプライムローンが世界同時不況まで発展してしまうのかのメカニズムを解説している。後半は、この世界同時不況へ有効な対策は量的緩和によるデフレ脱却であり、それを行わない日銀への批判をしている。

日本銀行は信用できるか」では、「何で世界標準策である量的緩和を日銀はやりたがらないのか?」について日銀の生い立ち、基本的な構成人員、これまでの金融政策を見て分析している。また、新日銀法により日銀が世界の中央銀行においても類を見ないほどの独立性(目標設定の独立性と目標達成手段の独立性)を得ていることを指摘している。

日本銀行は信用できるか」p.20の一節が衝撃的。

以上のような例外、または、特殊事情を除くと、日銀総裁になるための条件は「東大法学部卒業」である。この条件は財務省(旧大蔵省)の事務次官人事と同じである。2000年7月に財務事務次官に昇進した杉本和行は、東大紛争で東大入試がなかったため京都大学に入学したが、翌年東大法学部を受験して入学し直したほどである。財務省官僚おトップを目指すには、東大法学部卒業が必須条件なのである。

さらに、図表1−1から、佐々木直から松下康雄まで、日銀副総裁経験者と大蔵事務次官経験者が「たすき掛け」で(交互に)日銀総裁になる慣例が続いたことが分かる。どちらがなるにせよ、東大法学部である。

素朴に「経済学部=銀行」という単純発想で日銀総裁は経済学部出身だと思い込んでいた。