免許更新講習の位置づけがさっぱりわかりません

新理科教育MLにある人が「化学が苦手なので化学の講習をとった。そしたら試験が積分の問題で、“全然分かりません”と答案に書いた」というような投稿をしていました。

以下はそれへのぼくのコメント。

もしその講座が積分の解法をメインにしたものであるなら分かるのですが、そうじゃない内容だとしたら、その大学は教育が何も分かっていないと言えると思います。どうなんでしょうか。もし後者なら文部科学省へそのことを伝えるべきですね。そして、そのような酷い講習が行われていることをいろんな場で公開したほうがよいと思います。

  • 前者であることを願うばかりです。
  • もし後者なら、先ずここで大学名を出して貰いたいです。

講習をやる側は中堅ないしはベテランの教員にも満足行くような内容を精一杯努力すべきでしょう。やる側には「覚悟」が必要です。受ける側もよい内容、酷い内容のものは情報交換すべきですね。そういうことにこの新理科教育MLを使って貰って結構です。

ちょっと、講習を実施する大学側に厳しい意見かなぁと思います。

免許更新講習に関して私が大学からもらった説明では「最新の研究成果を紹介する」という趣旨でした。もしそうであるならば、科学の講習で積分の問題がでたとしても全然問題ないように思います。良く言われる話が、「大学において化学は物理に、物理は数学に、数学は哲学になる」という話でしたので、大学の講義レベルの内容であるならば、化学の講習で積分の問題がでてもまったくおかしい話ではないと思います(もちろん、講習の趣旨が異なれば結論は異なります)。

この免許更新講習では受講者の理解度をテストし成績をつけなければなりません。しかしながら、不合格を出した場合は不合格にした理由を書類で文科省に報告しなければならないと大学から説明を受けています。実際に講習を担当する側からいえば、はっきりいって受講者を不合格にしたくありません。その先生の人生設計を乱したくないですし、不合格理由を文科省に報告しなければならないですし。私の大学では、工学系が開講する講習がとても不人気でした。私にとってこれはよく分かります。受講者にとっては、この講座の成績によって免許が更新できるかどうかが関わっているならば、自分にとってアウェイな分野の講習を受けたいとは思わないはずです。

免許更新の適性を測るための講習であるならば、教員に求められる能力に関する講習およびそれの理解度テストをすべきなのですが、講習実施者に求められているのは「最新の研究成果を紹介する」という趣旨の講習です。最新の研究成果について理解できなかった受講者について免許更新をさせないというのは、教員に求められる能力として一体何を求めているのかさっぱりわかりません。まあ、テストしろと言われているので実施しますが。

普通に中高の先生がたにおもしろい話題を提供する or 新しい知識の習得機会を提供するぐらいの位置づけにし、講習を受けたかどうかだけをチェックするようにしたら、文科省のページにある「 教員免許更新制は、その時々で教員として必要な資質能力が保持されるよう、定期的に最新の知識技能を身に付けることで、教員が自信と誇りを持って教壇に立ち、社会の尊敬と信頼を得ることを目指すものです。更新制は不適格教員を排除することを目的としたものではありません。」という記述と整合するのではないかと思っています。

そういう意味で、本来の免許更新の趣旨からすると不適切な講習の情報が集積されるのは良いことだと思いますが(講習実施大学側もどういう講習が求められているのか分かってうれしい)、講習実施者への批判はちょっと勘弁していただきたいというのが実際に講習を担当する側である私の個人的意見です。

追記

文科省のページを眺めていたら、私の所属大学の説明がダメなような気がしてきた。ちなみに文部科学省が求めているのは以下のような講習みたい。

  1. 教職についての省察並びに子どもの変化、教育政策の動向及び学校の内外における連携協力についての理解に関する事項(以下「教育の最新事業」という。)
    • すべての教員に共通する事項を扱うものです。具体的には、「教職についての省察」「子どもの変化についての理解」「教育政策の動向についての理解」「学校の内外での連携協力についての理解」を主な内容とします。
  2. 教科指導、生徒指導その他教育の充実に関する事項
    • 学校種・教科種などに応じた内容を扱うものです。各教科の指導法やその背景となる専門的内容、生徒指導等、幼児・児童・生徒に対する指導力に係る各論的な内容を中心に扱います。

こんな内容は教育学部の先生しか無理じゃないの?でも、うちの大学は理学部や工学部にも講習の開講依頼が来てたよ。他の大学はどうなの?