うまい逃げ方

著者は宋 文洲さん。私は宋さんの書き物が好きでメールマガジンも購読している(宋文洲のメルマガの「読者広場」)。

この本のもっとも重要なメッセージは「つらかったら、我慢しなくて良いよ」ということ。最期には止めてもよいからこそ、自分ができるところまでがんばってみる。その結果、成し遂げることができるよ。というのが宋さんのメッセージ。宋さんの半生を文化大革命から振り返ることを通して、「つらかったら、我慢しなくて良いよ」というメッセージを伝えている。

この本で提案されているつらい人生をつらくなくする魔法は以下の5つ。

  1. この世に、つらくない人生なんかありえないと腹をくくる。
  2. 我慢や辛抱はしない。つらさから逃げ出す勇気をもつ。
  3. でも、限界まで、努力はする。
  4. 発想を転換し、つらさの呪縛から解き放たれる。
  5. あきらめることを知る。

面白いのは、宋さんの若いときの一番つらかった経験が面白い。宋さんは誕生時に文化大革命を経験し、大学までは困窮の中を育ち、日本に留学して、就職した途端に就職先の会社が倒産し、その後、起業するという波乱にとんだ人生を送っているのですが、一番つらかったのは以下のエピソードなそうな。

国費留学生になるという夢を繁多氏、憧れの実現に向かって大きく一歩を踏み出して普通ならば有頂天になるところでしょう。
ところが、その直後に、私は、それまでの人生でもっともつらい日々を送ることになってしまうのです。
理由は、体重の急増です。
〜中略〜
身長170センチで、体重は60キログラムから75キログラムに増え、二重あご、三重あご。悪いことに、大学のキャンパスには大きな鏡がありませんでした。不恰好に変わってしまった自分の姿を、チェックする機会がなかったのです。
〜中略〜
若い男性にとって、女の子にバカにされて笑われることぐらいつらいことはありません。そんな自分を私は絶対に許せませんでした。不恰好な自分も許しがたいものでした。
〜中略〜
目の前にあるものを何でも食べてしまい、どうしても止まらない。満腹になるとゴウゴウ寝て、翌朝にはもとのもくあみ。絶食前の、大きく突き出たお腹に戻っていました。
今度はヤケになってしまいました。「どうせ太るなら、食ってやれ」と食べまくる。すると、ダイエット前よりも太ってしまう。典型的なリバウンドです。いまなら、そういう知識もありますが、当時はすべて、自分の意思の弱さが原因だと思っていました。
自己嫌悪のどん底です。
大学では優等生。国費留学生の試験にも受かった。誰の目にも羨望の的であるはずです。でも、本人は今から思えばこんなくだらないことでつらくてつらくてたまらなかった。
つまり、何がつらいかなんて、はたから見てもわからないんですよ

ダイエットの失敗は、自分への絶望につながっていくのです。人生、生きていく意味なんかないと思ったのは、あとにも先にもこのときだけです。
当時の私が、こんなつらさにつきまとわれていたなんて、誰も知らないでしょう。私も、こんなことにそれほど悩んでいたなんてことを人にいうのは、初めてです。
この体験から、私は、誰が、どんなつらさを抱えているかなんて、はたからうかがい知ることはできないのだと悟ったのです。
〜中略〜
来日前後、私が体重のことでこんなに悩み、つらい日々をおくっていたなんて、これまで誰にもいったことがありません。
でも、私は、この悩みの日々、そして、この悩みからぬけだしたこのころが私の原点だと思っています。ありえないことのようですが、こんなばかばかしいことで、当の本人は苦しみ悶えていたのです。

人によって何をつらいと感じるかは違うというのは、やはり良く理解しておかないといけない。

他に気にいったところを列挙

私は、つらかったら逃げ出してしまえばいいのに、と考えています。実際、これまでそうしてきました。つらいことはやめる、という選択したこともあります。実は、このほうが、結果的に、よりつらいことに立ち向かっていける自分になれるのです。

逃げればいいと思っていれば、結局、逃げ出さずにがんばれる。

人間は、できることを、できるまでする。結局はこうして生きていくのです。いま、できることはつらがる必要はありません。できているんですから、つらくはないわけです。

(宋さんのお母さんの言葉)「貧乏は恥ずかしいことじゃないんだよ。恥ずかしいっていうのは、人のモノを盗んだり、人を傷つけたりすることをいうんだよ。」

どん底のつらさが半年、一年続くと、人間、ちゃんと吹っ切れるようにできている。それが私の実感でした。悩むのにも限界があるということです。
それまで、私は、意志の力で現実を還ることができると思い込んでいました。でも、意志だけでは変えられない現実があるということを自然に認識できるようになったのです。

悩みの底にあるときは、抵抗しないで、ただ悩み続ける。すると、ふっと吹っ切れるのです。

ずっとつらい人生なんてありまsねん。つらい状態がつづくようなら、つらい現実を変えるか、つらいと思う自分を変えるか、逃げ出すかやめるか。解決策はその三つです。

会社をやめて独立を決意する。もし、結婚しているなら、そんなときまず必要なのは、家族の了解です。起業してから数年間は、はっきりいって、家庭を振り返っている時間はとれないと覚悟したほうがいい。
家族とそうしたことまでじっくり話し合い、家族の了解が得られないようなら、企業はきっぱりあきらめるべきだ。そう、私は思います。

いちばんいい子育ては、親が気持ちを楽にもつことです。自分がやりたければやる。やりたくなければ、無理してやる必要はない。この原則は人生のすべてに通じます。

国を変えるのは、政治家や役人の力だけでは、できることではないんです。国民の一人ひとり、まず、自分自身の考え方、生き方を変えていく。こうすれば、やがて、国は確実に変わります。

つらいと感じるようなときは、これも人生の一シーンだと思うようにしてみてみましょう。
会社内の人間関係に悩む人も多いですね。人間関係の悩みは会社をやめれば解決するわけではありません。人は一人では、何もできない存在なんです。まして、仕事とは社会的に受け入れられてナンボのものでしょう。社会的に評価されない仕事なんて、ひとりよがりの御仁プレーにすぎないし、第一、収益に結びつきません。
人間関係は、むろん、成就へ他の個人差はあるけれど、素直に自分の気持ちをぶつけていく以外に解決の道はありません。
人間関係は相互関係なんです。自分がつらいと感じるような関係は、相手も必ずつらいと感じているはずです。そのつらさを感じあうようにすれば、少しずつ気持ちが通じていくものだと思いますよ。

疲れて体調が悪かったら、できるだけ早く休んで、疲れを取ったほうが、結局はいい仕事ができるんです。

大きな声ではいえませんが、会社なんかサボったっていい。遅刻したって早退したっていいから、思い切り、やりたいことをすればいいんです。

取り組む課題が大変であればあるほど、「レッツ プレイ」といえるような気持ちで立ち向かう。そのほうが、絶対にいい結果がでるのです。

やめたいといいだした人を義理・人情に訴えたり、恩義に感じろなどといってしがみついても、人間関係までダメにしてしまうより、気持ちよく送り出し、その後も気持ちよくつき合うほうが仕事の面でもトクではないでしょうか。

うまくいかない。失敗する。やり直しする。こうしたことをよく停滞とか後退という人があります。
でも、タイムスリップして時間を後に戻すことができないかぎり、停滞も後退もないんです。逃げ出したとしても、やめたとしてもそれは前進です。時間が前に進んでいくのですからね。

しみじみ、つらいと思うようなことがあったら、ちょっと裏返し、同じものの裏面を見るようにすればよいのです。

クヨクヨの種になっていた問題が一挙に解決するなんてことはまずは望めません。でも、ほんの少し、でも確実に改善したことが実感できる。100のトラブルのうち、たった一つでも改善するだけで、パーッと視界が晴れてきます。

ひどくつらいときには、もう、何にもせず、考え方を変えようともせず、ましてポジティブだとか前向きになろうとせず、ひたすら、自分のカラにとじこもり、自分はかわいそうな人間だと思い込むことも一つの解決法です。