怖い先生に質問をしにいくコツ

私の指導教員は怖い先生だった。論理があいまいな点、言葉の意味があいまいな点に関してとても容赦のない追求がある。たとえば、特に何気なく「〜などがあります。」と言おうものなら、「『〜など』ということは、他にもあるということですよねぇ?全部列挙してください」と突っ込まれる。また、先生が「***という言葉の意味を教えてください。」と尋ねてきたときに「たとえば〜」などと始めると、即座に「たとえはいりません。本質を教えてください」とくる。でも、基本的には優しい先生だったのでしどろもどろな学生の説明を長々とよく聞いてくれた、先生のコメントは「あなたが何を説明しているのかサッパリわかりません。もう一度まとめてから来てください」だったけど。

私が、四年生のときは当然のことながら、上記のような振る舞いをする先生が怖くて仕方なかった。ゼミや先生と一対一の討論のときは結構涙目になってしまうことがあった。

でも、先生に質問しなければわからんことがあるし、どう考えても先生の方が間違いだと思うときにはそれを伝えなければどうにもならない。そこで私が考えていたのが次のこと。
どうしても、気に入らなければぶん殴ってやればいいや。相手は50代、こっちは20代。口で負けたとしても腕力で勝負したら絶対にこっちが勝つ

まあ、とてもしょうもない発想だけど、この考えで救われていた部分がかなりある。いざとなれば、ぶん殴ればいいやというのは、その「いざというとき」までは我慢できることの裏返し。思いのほか「いざというとき」はさっぱり来なかったので、先生をぶん殴らずに無事に卒業できた。

何が言いたいのかというと、怖い先生に精神的に追い詰められた状態で質問しにいくのはよくないということ。どんな方法でも心に余裕をつくって、怖い先生に対処した方がよい。これが基本方針。

怖い理由:怒られる

怖いのは分かる。でも、一応自分自身に「本当にそんなに怖い?」と尋ねてみていただきたい。

三国志演義などでは「憤死」や「気死」などという表現がでてくるけど、ほとんどの場合は先生に怒られた程度じゃそんなことならない。だから、怒られたら死んでしまうというのはない。

暴力もほぼないと考えてよい。現在の常識ではどんなに正当な理由があろうと暴力を振るったほうが罰せられる。先生は社会人なのだから、あなたに暴力を振るって怪我させるということはほとんどありえない。この点が心配ならば、教員室に尋ねるのではなく、研究室(学生室)に来てもらって質問したらよい。

精神的なダメージが嫌というのもあるかもしれない。でも、先生なんてあなたの一面だけしか見ていないのだから、所詮どんなにきつい言葉で攻め立てたとしても、それはあなたを構成するほんの一部分に対する非難や批判や叱責に過ぎない。先生は、あなた自身(一部分ではなくあなたの全て)を非難したり批判したり叱責したりはできない。仮に先生があなた自身を非難したり批判したり叱責したりしていたとしたら、それは検討違いで、あさっての方向への非難、批判、叱責なので、あなたがそれに対してダメージ受けるなんてばからしい。

先生の指摘があなたにとって納得できるならば、それは多分、先生は怒っている(感情を高ぶらせてそれを発散している)のではなく、あなたを叱っているだけ。あなたを叱るということは、あなたに良くなって欲しいということなのだから、やはりダメージを受ける必要はない。今のあなた、もしくは過去のあなたに対する叱責であって、未来のあなたに対する叱責ではない。早く寝て、明日のあなたにバトンタッチしよう。

怖い理由:怒鳴られたり、暴力的な雰囲気で圧迫される

30歳を越えている大人(教授の多くは大体は40代後半〜50代前半)が研究指導のために20代前半の若造に怒鳴るなんて、そんなバカな。でも、卒業研究・修士研究時の悪循環を防ごうはてなブックマークのコメントやトラックバックを見る限り、存在するらしい。

まず、確認として本当に怒鳴っているのか?暴力的な雰囲気を醸し出しているのかを確認する。単に声がおっきいだけかもしれないし、暴力的なのではなくて単に振る舞いが荒っぽいだけなのかもしれない。ここいらへんは、その先生が他の先生にどう振舞っているか、研究の話をしているとき以外はどうか、酒飲んでいるときはどうか、タバコすっているときはどうかをチェックする。

あるいは、あなたの振る舞いが先生に喧嘩を売っている態度ではないかどうかも確かめるべき。あなたの振る舞いに単にあわせているだけかもしれない。

もし、あなたに非がなく、本当に怒鳴ったり、暴力的な雰囲気で圧力をかけてきているのであれば、可能なら早く研究室を変えよう。我慢する必要は全くない。たぶん、その先生は無能だ。ソフトウェア工学の分野の名作「デッドライン」に出てくる名言「プレッシャーをかけられても思考は速くならない」をまだ理解していないということだし。

研究室を変えられないならば、次の項の作戦を使おう。なお、絶対のその研究室で修士や博士をとろうとしないように。既に修士ならば、しょうがないので作戦は「いのちを大切に」を選択すべし。

怖い理由:うまく話せない。質問内容を忘れてしまう。

話せないことが不安なので、解決方法として話さなければ良い。シンプルな手段としては、お手紙、あるいはメールで先生に質問すれば良い。「あいつは、俺のところにも来ないで礼儀を知らんヤツだ」と先生に思われることが不安ならば、あらかじめ「私は緊張のあまり何を話すべきか忘れて、真っ白になっちゃうんです。ですから、手紙かメールで質問してよいですか?」と聞いておけばよい。

この方法の利点は、多くの質問が手紙やメールを書いているうちに解決されるということ。解決できたんだったら、わざわざ怖い思いをする必要はないのでとても効率的。

ちなみに私はメールでも質問を送って、それをプリントアウトして口頭で質問しに行くということをやっていた。質問メールを書くことで質問したい点がはっきりし、プリントアウトして持っていくことで、「わからなくなったら、プリントアウトしたヤツを見れば良いや」という安心感があり、気が楽。

怖い理由:研究が進んでいない

これは怖い。でも、本当に怖いのは何?本当に研究が進んでいないという事実が怖いの?違うよね、研究が進んでいないことに対する先生の反応が怖いんだよね。怒られるのが怖いならば、圧力は低いうちに噴出させるほうがダメージは少ないという事実をよく考えてみること。

基本方針は素直に研究が進んでいないことを伝えて、助力を請うのがベター。先生の給料には、あなたへの研究指導についても含まれていることを考えれば、助力を請うのは不名誉な振る舞いではないのがわかると思う。原因を尋ねられたら、非合法活動以外は素直に答えるべき(非合法活動は聞きたくないので墓まで持っていって欲しい)。

研究が進んでいない理由が自分の内部にあるならば、先生に分析してもらい楽になるべきだし、外部にあるならば、先生の力を借りて環境自体を変えるべき。

怖い理由:良い成果がでていない

上の「研究が進んでいない」との違いは成果がでているけど、それが「良い」とは思えないという点。「良い」か「悪い」かの判断は先生にゆだねてみてはどうだろう。

あるいは、現在得た成果が良いものだと仮定した上で良いと思える理由を考えてみて、そして、成果が悪いと仮定した上で、成果が悪いと思える理由も考えてみよう。そして、それを先生にも伝えてみよう。

怖い理由:先生に質問することなんてない

紙とペンを用意して「何がわからないのかわからないので質問はありません」と大きく書き、先生の前でも繰り返そう。たぶん、先生の方があなたに質問してくれる。

あるいは、先生に自分の研究の進捗報告をしてみても良い。

  • 何のために
  • 何を
  • どこまで行ったのか
  • 結果はどうだったのか
  • その結果から何がいえるのか

これらをまとめてメモしておけば、手際よく報告できる。

怖い理由:先生の言うことには裏がありすぎる

可能性は2つ

  • あなたが裏を読みすぎているか
  • 本当に先生が意味を持たしているか

私がベターだと思う行動は、

  • わざと裏読み能力を抑え、言われたとおり、文面どおりに行動する
  • メールや書面で相談内容や先生の指示を確認する

ポイントは、何か問題が起こったときの責任を自分にかぶせられないように予防線をはっておくということ。

おわりに

以上、思いつくかぎり。