評価付き投票

電子投票:「2頁以降不利」 提案の自民議員反対で廃案に

 自民、公明両党が提案し、民主も同意していた国政選挙電子投票を導入する公職選挙法特例法改正案が、提案した自民党の参院議員の反対で廃案になった。機器の信頼性への疑問に加え、参院の比例代表候補の人数が多くて投票機の一画面に収まらず、2ページ目以降の候補が不利になるといった議員心理が背景にある。

 電子投票は、開票の迅速化や自書が難しい障害者も投票できるメリットがあり、一部の自治体の首長・議員選では01年から導入されている。一方で、システムの不具合で選挙が無効になった03年の岐阜県可児市議選などトラブルも相次いだ。

 参院選比例代表は全国区のため、一カ所でもトラブルがあれば影響が全体に及ぶ恐れがある。今月4日には自民党参院議員83人中46人が「信頼性の確保が最優先」と慎重な審議を求める緊急アピールを発表した。

 その一人の世耕弘成議員は「比例代表選出議員にとって当落にかかわる」と指摘する。昨夏の参院選比例代表候補者は159人。電子投票はタッチパネルに表示された候補者の中から意中の人物を選ぶ方式が主流だが、これだけの人数を一画面に収めるのはほぼ不可能だ。「2ページ以降の候補者は有権者が見ないから落ちますよ。今でさえ『あ』で始まる候補者は得票が多い」と主張する。

 法案は昨年12月の臨時国会民主党も賛成して衆院を通過した。しかし、参院で民主党が安全性の問題を指摘して審議が中断。今国会で「投票内容を紙に記録する装置の導入を検討する」との修正を加え、与党と民主党が折り合っていた。【日下部聡】

毎日新聞 2008年6月21日 12時50分

「その一人の世耕弘成議員は「比例代表選出議員にとって当落にかかわる」と指摘する。昨夏の参院選比例代表候補者は159人。電子投票はタッチパネルに表示された候補者の中から意中の人物を選ぶ方式が主流だが、これだけの人数を一画面に収めるのはほぼ不可能だ。「2ページ以降の候補者は有権者が見ないから落ちますよ。今でさえ『あ』で始まる候補者は得票が多い」と主張する。」というのは電子投票の問題ではなく比例代表選出方法の問題。「あ」で始まる候補者の得票が多いということは、誰でも良いということなのだから、考えるべきは

  • 候補者の情報をうまく行き渡らせるという行動の結果が出ていないので、選挙運動の方法を見直す
  • 有権者が候補者を知るというコストを払おうとしていないので、どうすれば有権者に候補者を知るというコストを払ってもらうようにするのか、政党運動を含めて再検討する
  • 誰でもよいのだから候補者ごとに選ぶのは止めて、ランダムに当選者を選出する
  • 誰でもよいのだから裁判員制度の強力版として、国民国会議員制度を実施し、参議院議院の一定数を20歳以上65歳未満からランダムに選出。参議院議院に選ばれたときには、任期終了までそのとき持っている資産を完全凍結し、会社のポストも完全保持(その間の維持人件費は政府が会社に補填)。給料・宿舎は完全支給とする。たぶん、政治が他人事じゃなくなる。そして、別名が「赤紙」になることは確実

お任せボタン(あるいは多数に従う)

マンションの理事会でアンケートを取ることがあるのですが,その際に便利な選択肢を教わりました.

1.賛成
2.反対
3.多数に従う

選挙の選択肢にも「多数に従う」があっても良いのかも知れません.

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法律で定めた仕様にしたがって公平にランダムに表示することが可能ならば「ランダムに選ぶ」があっても良いのかも知れません.サッカークジのBIGのように.後で自分が選んだ(=コンピュータが選んだ)候補が当選していたら,少し嬉しいかも知れません.学生時代,私が選ぶ候補は軒並み落選して悔しかったことをよく覚えています.見る目が無いのか,(地方都市在住者としては)リベラル過ぎたのか.

すごく、おもしろい。今だと投票に行かないというのが「多数にしたがう」という意志表示。

考えているうちに,昔書いたメジアンを使おうの後半部分を思い出した。これは朝日新聞2007-06-12の「脱・1人1票」という記事の紹介で,投票で一人を選ぶのではなく,各候補者に評点を付けてそのメジアンが最大の候補を選ぶというものである。朝日のデータベース「聞蔵II」のPDFでは肝心の図表が白塗りされているが,Balinskiと Larakiのサイト vote expérimental に朝日新聞のスキャン(PDF)も置いてある。彼らの方法(“majority judgement”)の数学的な解説はPNASの A theory of measuring, electing, and rankingという論文に詳しい。候補者の順序関係ではなく評点を用いることによってArrowの定理などで示される投票の限界を超えることができるというものだ。実際の選挙で本物の投票と並行して実証実験を行った結果が朝日新聞や上記vote expérimentalページに載っている。

アンケートや投票に関してはいろいろな問題があっておもしろい。

  • 媒体に由来する問題:代表性やバイアス(結果に何らかの偏りが含まれること)に多くの問題がでる
  • 提示技術に由来する問題:媒体に由来する問題に似ているが、質問の内容、質問の並べ方(尋ねる順番)によって結果が変わること。誘導的な質問や上記の名簿順にしたときにページの上やア行、ワ行の人がチェックがつけられやすいなど
  • 分析技術に由来する問題:ほとんどの場合、バイアスをどのように取り除くか?という問題。技術としては統計手法がよく使われる
  • アンケート・投票の設計に関する問題:上の3つを考慮した上で、自分の知りたいことを正確に調べるためにどのように誰にアンケートや投票をするべきかという問題
  • 情報セキュリティの問題:秘密保持・改竄防止など
  • 利用容易性、可用性(いつでも使えること)の問題:言語、技術、職業、貧富に関わらず投票・アンケート対象とできること