小学校、中学校、高校の先生方を地味にITでサポート

某自治体の方をお話しする機会があり、そのとき聞いたのが小学校、中学校、高校にパソコンや校内LANなどのハードウェアが普及し始めたのだけれども、それをうまくつかいこなせていないというお話。あと、学校のWebサイトなどを開設して欲しいという要望が保護者の方からあるそうだけれども、それに対応できる教員がいない、いたとしてもその先生が転勤してし
まうとWebサイトの管理ができなくなってしまうというお話。

パソコンやネットワークはある種の事務仕事を実に効率良くしてくれる反面、習得に時間がかかる。そして、先生の業務の大半から数割はパソコンがあんまり役に立たない業務。そうなると、パソコンを使えば月に10時間業務を短縮できるけど、習得に5時間かかるのであれば、どうしても使う気にならないというのも致し方ない。

どうやればITでこういう状況の先生方を手助けして、本来の業務や家族の団欒や何もしないでボーっとできる時間をとれるようにしてあげられるかというのは、工学系IT者として気にかかるところ。

先日のIPAX 2008で見た以下の2つのソフトウェアは地味に小学校、中学校、高校の先生方をサポートできるのでは?と思った。

一つ目はAppliStation

アプリケーションのダウンロードやインストールが面倒だと思ったことはありませんか。いままでの環境では、一貫してアプリケーションが管理されていないため、面倒な作業が必要でした。そこで様々なアプリケーションの情報をソフトウェアリストとして一意に管理することで、管理システムはアプリケーションのダウンロードなどの作業を自動化し、面倒な作業を解消します。このソフトウェアリストにはファイルハッシュ、アーキテクチャの情報が含まれており、安全性確認や64ビットアーキテクチャ判別を自動で行います。

どういうソフトウェアかというと、Debian GNU/Linuxのapt、RedHat系のyumのようなソフトウェア。こんな使い方ができる。

  1. 職場(職員室、研究室)のすべてのPCにインストールしているべきソフトウェアの一覧を用意する
  2. AppliStationを使って、それらを各自にインストールさせる(ボタンを押すだけで基本的にOK)
  3. 全員が共通のソフトウェアを持っているので、職場内のデータ交換、ノウハウ共有が楽になる
  4. 脆弱性が発見されたときには、各自に自動アップデートするように指示する

フリーソフトウェアWindowsに自由にインストールする人たちは既に「パソコンが良く使える人」の領域に入っている。多くの人は、道具としてパソコンを使いたいだけで、パソコンを使うこと自体を楽しみとしているわけではない。理想的には電卓やワープロ、テレビ、洗濯機などのような家電としてパソコンを使いたいと思っているはず。そんな人たちに「このフリーソフトウェアを入れると便利ですよ。これは授業で便利に使えますよ」と言っても「インストールの仕方が分からないし、なんか怖いし」と思われるだけ。

このAppliStationなら、みんなのパソコンを「〜も・・・もできる可能性を秘めたコンピュータ」から「〜ができる道具」にしてくれる。あとは、その道具(フリーソフトウェア)の使い方を物語(**という目的に〜というように使う)と一緒に伝えれば、その物語に共感を覚えた人はそれを使う。とても便利。

はてなブックマークのコメントで教えていただいたのだけれども、他にもWindowsでLinux風パッケージ管理「Win-Get」というソフトもあるらしい。

二つ目のソフトウェアは、SQS

  • SQS(Shared Questionnaire System)は、「普通紙マークシート方式による調査票作成・読み取り集計ソフトウェア」です。
  • SQSを利用するためには、特別な機材は必要ありません。 PC、白黒プリンタ、ドキュメントスキャナがあればOKです。
  • SQSは、小中高校の先生などをエンドユーザとして、全国的な導入が始まっています。インストール・利用は、とっても簡単です。
  • SQSは、無償・自由な利用が可能です。

私は授業でWebアンケートを使いつつ学生に授業の感想などを聞くのだけれども、結構、いろいろ書いてくれて授業を進めるのに役にたっている。一方で、どこでもネットワークにつながるわけでなく、場合によってはコンピュータも一人一つ渡せるわけでもない学校が多いと思う。そんな環境で毎回授業末にアンケートとりながら授業を進めるなんてことをやったら、先生は過労で死んでしまう。そこで、SQS。IPAX 2008で説明を聞く前までは、紙ベースでのアンケートしか利用できないのかと思っていたら、そうではなくWebベースアンケートもこれで実施できるとのこと。なので、場合によっては携帯からアンケートに答えさせることもできるかもしれない。

開発者の方もおっしゃっていたが、アンケートで難しい点の一つがまともな質問票を作ること。まともな質問票とは、自分が調べたい事柄について役に立つ回答を得ることができる質問票のことだ。SQSはこの質問票を如何に共有するか?という点から生まれたらしい。私もこの意見に賛成。教員の立場としてアンケートを実施するのに躊躇する点は、第一に授業時間が削られる。第二に質問票を作るのに手間がかかる。第三に回収しても集計が大変(数十人の回答を処理するのは案外きつい)。SQSを使えば、第一のポイント意外は大体クリアーできる。

IPAX 2008でこの二つのソフトウェアを見て感銘を受けたのでみなさまにもご紹介。