登山隊に山の頂上に立つのが目的でない人がいたら?

ハッとさせられる問いかけ。

riywo # 分かるけど,山の頂上に立つのが目的じゃない人が紛れ込んだときどうするのかを示して欲しい.自分たちの基準で測るのはいいけど,みんなそうでしょ,と押し付けるのはどうか.

はてなブックマーク:教わり下手の特徴 - 発声練習より)

多分エントリーであげられている教えられ下手の話についてではなく、私が最後に述べたこの部分に対する問いかけ。

あることを継続して実行でき、それが自分、もしくは他人の役に立つのであれば、それを始めるのに損得勘定だろうが、真摯な思いからだろうが、偶然だろうが動機はなんだって良いと思う。山の頂上までたどりつくことが目的ならば、どの登り口から登っても、飛行機やヘリコプターをつかったとしても、頂上に立てるのならばどれでも価値は一緒だと思うので。

発声練習:教わり下手の特徴より)

私の想定しているのは、登山隊=全員が山の頂上に立つことが目的の人。riywoさんが想定しているのは登山隊にいるけれども山の頂上に立つのが目的ではない人。たとえば、途中の景色を楽しみたいとか、登山隊の誰かをサポートしたいとか、山の生態系を調べたいとかなど。なるほど、あり得る。

確かに、登山隊にはしかるべき理由があって参加しているけれども、必ずしも山の頂上に立つことが目的でない人にとって、「どんな方法でも頂上に立とうぜ!!」と迫られたらいやだろう。じゃあ、それに対する対処法は?仮に「絶対に頂上立とうぜ!」と言い出す人をムードメーカー、「よっしゃ、絶対立とうな!」という人をフォロワー、「いや、それが俺の目的じゃないんだけど」という人をメンバーと呼ぶことにすると。ムードメーカーが周囲に配慮する人か俺様な人かの2通り、フォロワーが周りが見える人か熱狂してムードメーカーしか見えなくなる人かの2通り、メンバーが言える人か言えない人かの2通りの計8つの組み合わせがあり得る。

ムードメーカー フォロワー メンバー 対策
周囲に配慮 周りが見える 言える 対策A:相談
周囲に配慮 周りが見える 言えない 対策B:アピール
周囲に配慮 熱狂 言える 対策A:相談
周囲に配慮 熱狂 言えない 対策B:アピール
俺様 周りが見える 言える 対策A:相談
俺様 周りが見える 言えない 対策B:アピール
俺様 熱狂 言える 対策C:自己防衛 か 対策D:離脱
俺様 熱狂 言えない 対策D:離脱
不明 不明 言える 対策A:相談(その後だめならば、対策D:離脱)
不明 不明 言えない 対策D:離脱

基本的にムードメーカーよりもフォロワーの方に注意すべき。いろいろな歴史上のイベントや自分の経験を思い出しても、提案者や創始者よりもその賛同者や後継者の方が過激になりやすい。

私の考えでは、メンバーは自分の体と命の安全を一番大事に思い、二番目に登山隊に加わった理由を大切にしたほうが良いと思う。登山は本質的に危険なもの。信頼できない人とは一緒にしないほうが良い。この観点から、上記8つの組み合わせ+2に関しては上の表のように振舞うのが良いと思う。

「対策A:相談」は文字通り相談(not 宣言)。自分が登山隊に加わった理由と、自分が登山隊全体の目的と他の人間をしっかりとサポートするつもりであることをムードメーカーとフォロワーに説明し、自分が頂上に立つことを目的としていないという点に対して了承をとること。ムードメーカーかフォロワーのどちらかが冷静ならば、必ず理解してもらえるはず。重要なのは、登山隊全体の目的をサポートするという責任をちゃんと果たすことを伝えること。自分の目的は登山隊全体の目的と違うという点だけをアピールすると反発をうける可能性があると思う。ムードメーカーかフォロワーのどちらかが冷静でないならば、冷静な方の助力を得てから冷静でない方にも消極的賛成をしてもらえるように持ち込んだほうが良いと思う。

「対策B:アピール」は、対策Aよりは自分を削る作業が必要。行動と態度で自分が登山隊全体の目的と他の人間をしっかりとサポートするつもりであることと、自分が登山隊に加わった目的が、「頂上に立つ」ことではないことをムードメーカーかフォロワーに悟ってもらう。冷静でない方の人間にも、十分に登山隊全体の目的と他の人間をしっかりとサポートする行動をとっていれば、「頂上に立たない」ことに対して見逃してもらえる可能性が高い。ここで、重要なのはあきらめること。相手は神様や超能力者、自分の親や祖父母じゃないんだから、何も言わなければ何もわかってくれるわけない。多くを期待せず、自分の体と自分の目的を守れれば良しと考えたほうが良いと思う。最悪を考えてそれに備えておけば、いかなる状況も想定どおりか想定よりも良い状況であることをお忘れなく。

「対策C:自己防衛」は、自分の体や命を守ることを最優先にするという対策。ムードメーカーやフォロワーが冷静でなく、相談しても敵意しか帰ってこないことがわかっているのならば、何を言ってもしょうがない。言いたくなるだろうけれども、何も言わず、自分に割り当てられた責任だけを最小限果たしたほうが良いと思う。耐え切れなくなったら、しょうがないので離脱するべき。だって、ムードメーカーもフォロワーも冷静じゃないんだもの。

「対策D:離脱」は、登山隊からの離脱。伝えられないし、察してもらえない状況ならば離脱するしかない。離脱できないのであれば、最大限自分の体と命を守りつつ、さっさと頂上までいって下山するのがベスト。離脱もできないのに、ムードメーカーやフォロワーの目的、あるいは、登山隊全体の目的に反するような態度をしてムードメーカーとフォロワーに攻撃されるような状態になるのは良くない。目的は自分が生きていたらいくらでも達成できるので、自分の体を最優先に守るべき。

ちなみに、ムードメーカーとフォロワーの性質が不明の場合は、さっさと相談してだめならば離脱したほうが良いように思う。時間がたてば立つほど、あいまいな態度をとればとるほど、選択肢の幅が狭まり、にっちもさっちもいかない状況になってしまうと思う。山を降りるならば、下りやすいときに降りたほうが良いと思う。

メンバーが何も言わないけれども、常にムードメーカーとフォロワーはメンバーの様子を見て、メンバーの意思を尊重するようにはからってくれるべきという要求はとおらないので注意した方が良いと思う。なぜか?ムードメーカーとフォロワーも同じように考えているから。3者とも相手に自分をことを察しろと思っている状況においては、絶対に誰か一人が何の苦労もなく目的を達成できるはずはない。また、この要求が通るということは、メンバーが絶対的な権力者として登山隊の中で君臨しているということなので、これはこれで無理がある。タンスターフル

登山隊で例えたけれども、卒業研究の場合はどうするか?学生は実際のところ卒業研究を一生懸命やって自分を伸ばしたいという子から、別に卒業研究の単位がもらえて卒業できれば良いですという子まで幅広くいる(私の所属する学科は卒業研究が必修単位)。なので、あらかじめ、学生に卒業研究の難度は与えるテーマによって違うことを十分に理解してもらったうえで「あなたにとっての卒業研究の位置づけはなんですか」と尋ね、その位置づけにそった卒業研究のテーマを割り振るようにしている(といっても、私は助教なので、教授と相談したでだけれども)。だから、私の所属する研究室では、山に登りたくないといっている人に山を登らせることはしない(しようとしても無理であることはもう十分経験したので)。

じゃあ、修士研究の場合は?あなたは登山隊の目的を知った上で登山隊に参加しているので、上の登山隊でのたとえのとおりの振る舞いを求めます。離脱するなら早めにどうぞ。博士研究は?あなたは、ムードメーカーでしょ。