公開鍵暗号を超える暗号

量子暗号など原理段階にとどまる基礎研究を除くと、現代の暗号研究は関数探しの競争となっている。

RSA暗号素数のかけ算と、その逆の素因数分解という1種の関数を利用した暗号方式だ。これは楕円曲線暗号やElGamalといった公開鍵暗号方式か、DESやAESといった共通鍵暗号方式かを問わず同じで、暗号化には何らかの関数を使う。

CAB方式では、その関数自体が無限個の中から利用者が自由に選べて、いつでも変えられるのだという。

「例えば、xのm乗というのも1つの関数ですし、2xも関数です。実際には逆関数の計算が極めて難しい関数の集合を利用していますが、こうした関数からなる無限集合から鍵となる関数をピックアップします。盗聴者の探索しなければならない鍵空間は無限大ですから、鍵を推定できる確率はゼロです」(大矢教授)。

関数自体を鍵として使う暗号?さっぱりわからない。

「われわれの開発した暗号方式は、数学的に解読が不可能であると証明されています」。

「ある暗号方式が解読できない」という命題をどのように数学的に表現するのかとても興味深い。

追記(2008/04/15)

先週末の金曜日に掲載した「『解読不能は数学的に証明済み』、RSAを超える新暗号方式とは」がアクセスランキングの2位に入っているが、はてなブックマークやブログで、たくさんのご指摘、ご批判をいただいた。取材、執筆したニュース担当記者である私(西村賢)はいくつかお詫びしなければならない。

1つは記事タイトルや冒頭の記述だけを見ると、まるで確定事項のように見えること。アルゴリズムの公開や検証が済んでいないので「原理的に解読不能と主張する研究者が現れた」と書かなければならないところだった。記事の末尾で「CAB方式は、まだ実績がなく事実上未公表の技術だ。情報が公になっていくにつれて、専門家たちがどう反応するかは未知数だ」と書いたときには、今後アルゴリズムが公表されてすぐに理論的な瑕疵が見つかる可能性があるという意味のつもりだったが、誤解を与える記事構成だった。

〜中略〜

お詫びの2つ目は記事の内容が「解読不能」だったこと。ジョーク系ニュースサイト、ボーガスニュースでネタとして取り上げられるというのは、かりそめにもIT系を名乗る記者にとって痛恨だ。

しばらく何事もなかったかのように粛々と日々をやり過ごし、やはりCAB方式がガセだったと分かるか続報を聞かずに自然消滅すれば、それはそれでいい。その頃には誰も覚えていないだろう。と、そういう態度を取るつもりはまったくない。

〜後略〜

ちゃんと、フォロー記事を出した。えらい。