むしろ大学内にパブが必要

大学にスタバは必要か−。筑波大中央図書館に18日、スターバックスコーヒーが開店した。大学側は客足を図書館の利用率向上につなげたい考えだが、教授の1人が大学新聞で異を唱えるなど、ちょっとした論争になっている。

 スターバックスが設置されたのは図書館エントランスホール。これまでは新聞閲覧コーナーになっていた。全国の大学では付属病院にコーヒー専門店が出店する例はあるが、図書館に設置されるのは全国初という。

MSN産経ニュース:大学にスタバは必要か 筑波大でHOTな論争より)

私の勤める大学は金がないのか土地がないのか定かではないけれども、学生がたまっておしゃべりを楽しむスペースがあまりない。大学は勉強の場でもあるけれども、学んだ知識を生かすには他者との交流が必要不可欠。しかも、できるかぎり実際に顔をあわせて、身振り手振りや口調なども感じながら他者と交流するのが望ましい(情報量が多いし、電話や文字ベースのコミュニケーションに比べてすぐに反応が返せる)。顔をあわせて他者と交流するためには物理的な空間がどうしても必要。なので、大学内には喫茶店や食堂などおしゃべりを楽しめるスペースがたくさんあるのが望ましいと思う。そういう意味で、学内におしゃべりスペースが増えるのは良いのではないかと思う。

一方で、最近の学生(私が学生のときも含む)が弱いといわれるのが縦のつきあい。すなわち、年上や年下との付き合いがあまりうまくないように思える。これは、そういう機会がどんどんと減っているからだと思う。せいぜい、部活動の先輩・後輩が精一杯で、10年年上の人とか自分の親ぐらいの年の人とか、おじいちゃんくらいの年齢の人だとか地域社会の活動が減れば当然機会は失われるので弱くなる(そういう意味で、習い事している人たち、接客業のアルバイトをしている人は縦のつきあいがうまいかも)。

一方、大学の一番の資産はなんといっても教員である。たぶん、大学の中で一番金もかかっているのだからこれをもう少し利用しない手はないと思う。この教員たちを学生の縦の付き合いや議論の練習の相手、あるいは情報収集の相手としてどうにか利用できないかと考えると一番うまい手は、学内にパブをつくるのが良いのではないかと思う。パブといっても、きれいなお姉さんのいるようなやつではなく、英国風立ち飲みパブ(たとえば、Hubのようなやつ:http://www.pub-hub.com/)。帰り際に一杯ビールをゆっくりと飲んで、それから帰れるようなやつが良い。

なんで、そんなこと考えるかといえば、私がビールを帰り際に飲みたいからなのだけれども、もう一つの理由は、ある時間にある場所にいけば教員と学生がおしゃべりできるスペースを確保すること。

数学系の研究者の方々の話によれば、多くの数学系学科では、お茶室・休憩室とよばれるスペースを学科内に確保し、暇な教員や学生、気分転換や議論を求める教員・学生が集まり、日々雑談や議論をしているという。しかも、数学系学会の場合は、発表も重要だけれども、その合間のコーヒーブレイクや打ち上げ会の方がもっと重要で、そこで新たなアイデアのタネを仕入れたり、自分の主張を磨いたりしているらしい。

私の属している部署では、教員のみなさんが活発に議論を交わしたりする機会はあまりない。仲の良い先生同士で勉強会をしたり、飲みにいったりしたときに議論を交わすことがある程度。でも、それでは学生に先生同士、あるいは先生と学生同士がガンガン議論をしていることを目にする機会を提供できない。ぜんぜん知らない先生同士が喧嘩間際の議論を酒を飲みながら熱くやらかしているのをたまたま目撃できたほうがどう考えても面白いし、衝撃的だ。

パブが学内にあれば、一杯やっている先生や学生に気軽に議論をしかけられる可能性がある。なんせ、普段はお堅い先生でも酒が入れば柔らかくなろうというもの。議論を続けて欲しければ、一杯おごればもう少しつきあってくれるに違いない。少なくとも私はつきあう。また、酒の席ならば、他人の議論が面白そうならば失礼して混ぜてもらうことも可能だろう(バーのカウンターなんかで飲んでいるときに知らない人とおしゃべりすることなんてよくあること)。

ビールだけだと、嫌な人がいるかもしれないので、学内に英国・アイリッシュ風パブ(ビール、ウィスキー)、ワインバー、立ち飲み屋(日本酒を缶詰で飲む、焼き鳥はちょっと煙がでてやりすぎ)の3種類ぐらいあれば、かなりの教員を足止めできるに違いない。

さらには、気持ちよく、あるいは滑らかに議論に入れるように議論のタネをパブ側で仕込んでくれていればなおよし(時事ニュースを電光掲示板で流しておく、スポーツバーかニュースバー式にする、ディベートデイなんかを設ける)。

うちの大学にスタバはいらんから、アイリッシュパブが入らないかなぁ。バスの停留所の横なんかに作ってくれるとすごくうれしいのになぁ。

なお、酒が飲めない人にはおいしいコーヒーや紅茶、チョコレートなんかをだせるようにしておけば良いと思う。どうせ、研究者なんてほっといても理屈っぽくて議論大好き人間なんだから、アルコールの力を借りんでも十分テンションは高いと思うし。甘いのでエネルギー補給しておけばいいんじゃないの。アイスとか。

追記:イギリスの大学の例

あるいは、イタリアのバール(立ち飲みコーヒー)なんかも良いかも。

私が求める条件は、どっかり腰を据えて飲むのではなく、あくまでも1杯か2杯を軽く嗜むスタイル。飲み会になってしまうと新規にきた人が入りづらいし、いる人も出づらい。毎回、必ず数時間いないといけなくなるならば、誰も帰りにちょっと寄ろうと思わない。気が向くときは長くおしゃべり、そうでなければさっさと飲んでさっさと帰宅というのが良い。