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「言語技術」が日本のサッカーを変える

はじめに
1章 「言語技術」に挑戦するJFAアカデミー福島
2章 実践! ことばで鍛えるトレーニング
3章 論理でパスするドイツ・サッカー――なぜいま「言語技術」か(1)
4章 世界との差は、判断力――なぜいま「言語技術」か(2)
5章 監督のことばが、選手を伸ばす
6章 論理プラス非論理――日本流サッカーの夢へ
あとがき
参考文献
関連年表

「そのプレーの意図は?」と訊かれたとき、監督の目を見て答えを探ろうとする日本人。一方、世界の強国では子どもでさえ自分の考えを明確に説明し、クリエイティブなプレーをしている。
日本サッカーに足りないのは自己決定力であり、その基盤となる論理力と言語力なのだ。
本書は、公認指導者ライセンスやエリート養成機関・JFAアカデミー福島のカリキュラムで始まった「ディベート」「言語技術」といった画期的トレーニングの理論とメソッドを紹介する。

素晴らしい本。いくつかの観点で素晴らしい。

一つ目として外国語で発想するための日本語レッスン (Amazon.co.jp)を読む導入の本として素晴らしい。この本を読んで納得するところがあったら「外国語で発想するための日本語レッスン」を読んでみるとより詳しいことがわかる。

二つ目として、言語技術というものがサッカーという実技のベースとなっているということが興味深い。

p.17より引用

私たちは、これまでに見たことのないような創造的なプレーをする海外のサッカー選手に出会ったとき、大きな驚きと素晴らしい感動を感じてしまいます。そうした「クリエイティビティ(想像力)」をどうやって育てていくか、というなら、失敗を重ねながら育てていくしかないのだろうと思います。世界的にレベルが高くて強いヨーロッパ選手たちは、子どもの頃、それも相当幼い頃から、草サッカーをしてきたのではないでしょうか。草サッカーのよいところは、どんな失敗でも許される、という点です。失敗をたくさん積み重ねていく中から、「なぜ失敗したのか」「その原因は何か」「どこをかえていけばよいのか」、ということを考えるに違いないのです。

クリエイティブな能力は、幼い子どもの時にこそ、育つ。「答えはひとつとは限らない」という経験を、みんなでトライしなくてはいけません。「自分ならこうしたい」「私はああしたい」「あっ、これで失敗しちゃった」と、多くのさまざまな体験を通して学ぶ中から、クリエイティブな力が育ち、自己決定力が備わっていくのです。

〜節がかわって〜

授業で質問を投げかけた時、日本の子どもたちは、しーんと静まりかえる。なぜなら、学校というところは「間違ってはいけない」場所だという考え方が、心の中に染みついてしまっているからです。だから子どもたちは、なかなか「自分の考えを表現する」というリスクを冒そうとしません。

しかし、ちょっと考えてみてください。こうした環境の中で成長していく子どもから、失敗を恐れない、勇気あるストライカーが育つでしょうか。ストライカーとは、まずは「オレが考えたやり方で挑戦する」という、失敗することを恐れない精神から生まれるものなのです。

自分の考えを他人に伝わるように話す技術、他人の言ったことを正しく理解するための技術、すなわち「言語技術」が優秀なサッカー選手を作り上げるために必要だというのが著者の田嶋さんの主張である。

三つ目として、サッカーの門外漢からすると日本のサッカーの裏方の仕組みが高いレベルで整いつつあるという事実に驚かされる。ドイツでの指導者経験と通して、世界と日本の指導者のレベルの差を感じ、世界に追いつくために指導者ライセンスの取得項目にディベートをいれ、指導者の能力アップを図っていること。そもそも指導者にライセンスが必要であることに驚いた。また、真のサッカーエリートを作るためにエリート養成施設を実際に作り、既に運営をしているという点にも驚いた。こりゃ、サッカーが組織として野球を置き去りにするのも近いや。

サッカーに興味がある方、ヨーロッパと日本との文化の違いに興味のある方、英語がしゃべれるのに英語の発想が出来ない方はこの本をぜひ読むべきだと思う。そして、この本の「言語技術」に関する主張に納得された方は、田嶋さんに依頼されてサッカー協会で言語技術を教えている三森さんの本外国語で発想するための日本語レッスン (Amazon.co.jp)外国語を身につけるための日本語レッスン (Amazon.co.jp)を読むべきだと思う。

もしかしたら、日本の学力問題はサッカーの強化という方向から解決してくるのかもしれないと思わされる本。