IPAフォーラム2007

IPAフォーラム2007に行ってきた。準備されたIPAの職員・明治記念館の職員のみなさま、講師・パネラーのみなさまお疲れ様です。刺激的な一日でした。私は途中で力尽きましたので途中で帰っちゃいましたが。

以下、感想とメモ

人材育成討論会:「学生から見たIT産業」と「IT産業から見た学生」〜IT産業は学生からの人気を回復できるか〜

情報はいろいろ収集できたけれども、討論会として正直つまらなかった。

  • 第一に時間が短い(1時間)
  • パネラーが多い(企業側3名、学生10名)。一人当たりしゃべる時間が短くなる。自己紹介だけで1時間中10分を消費。
  • 企業側パネラーの意図認識不足。お忙しい御三方なので準備する時間が足りなかったと思うけれども、結構見当はずれの答や持論の開陳があり討論会のテンポが悪くなった
  • 討論会のやり方がうまくない。質問や意見をその場で考えさせる形式は素人にはきつい。パネラーへは質問を教えておかずに、学生側への質問「IT産業のイメージについて」、「IT企業のイメージと印象について」「IT技術者という仕事へのイメージと印象について」、産業界側への質問「企業が欲しいと思う人材」についてそれぞれ答えてもらう形式だったけれども、予め質問の回答を書いてもらいそれの補足の形で回答者にコメントをもらう形式がよかったと思う。

今日の討論会を見て思ったのは、明石家さんまのやっている番組「恋のからさわぎ」「踊るさんま御殿」のやり方がうまいということ。これらの番組では、あらかじめお題について回答させておき、その回答に対する詳細説明として話をしてもらう。こうすることで、話を振られたときに何をしゃべれば良いのかをあらかじめ準備でき、本番に頭が真っ白になり何もしゃべれないということを防ぐことができる。また、とっさに面白いエピソードを思いつく必要がなく、充分に吟味した話題をしゃべることができる。

今日の討論会は討論することが実際の目的ではなく、企業側の考えと学生側の考えに違いがあるということを会場に来ている人に知ってもらうのが目的だとおもわれるので、充分に考えられた回答を披露するのが良かったと思う。今日みたいな質問をその場で振るのは、相手が本音を語らないのを前提として隙をついて本音をしゃべらせる、あるいは、パネラーの頭の回転の速度を見ることに使うべき。

「〜IT産業は学生からの人気を回復できるか〜」が副題だけれども、私が考える学生がIT企業に就職したくない理由は以下のとおり

  1. 学生が想像するIT企業が求める人材像と現在の自分にギャップがあるので就職を希望できない(したくない)
  2. 学生が希望する待遇と学生が想像するIT企業が提供する待遇にギャップがあるので就職を希望したくない
  3. 現在の自分とIT企業が求める人材像にギャップがあるので就職を希望できない(したくない)
  4. 学生が希望する待遇とIT企業が提供する待遇にギャップがあるので就職を希望したくない

最初に2つは主に学生の情報収集能力が不足しているあるいは企業の広報が足りないことに由来する。後ろの2つこそは本質的な問題。学生側と企業側双方が互いに歩み寄らないといかんともしがたい問題。これを明らかにするために、学生が想像するIT企業が求める人材像と同じく学生が想像するIT企業が提供する待遇、学生が希望する待遇と、IT企業が求める人材像、IT企業が提供する待遇をそれぞれ説明してもらい、そのギャップをネタとして

  • 学生の情報収集はどこが欠けていて問題なのか?
  • 企業が学生に誤解されている点はどこで、それはどうやって是正したらよいのか
  • IT企業が求める人材像は具体的かつ現実的なのか、学生がその人材像にあう人材になるとしたら何が足りなくて、どう対処したらよいのか
  • 学生が求める待遇は現実的か?現実的でないとしたらどこか?どうしてそのような待遇を求めるのか?
  • IT企業が提供する待遇は適切か?適切でないとしたらどこか?どうしてそのような待遇しか提供できないのか?

を明らかにしていくとよかったと思う。たぶん、来年も同じ企画があると思われるので来年に期待。

面白かったコメントは以下のとおり

  • IPA理事長:ソフトウェアの特徴は「見えない」こと
  • TIS社長:IT企業名がよく知られていないのはソフトウェアというのは社会の基盤となっているから
  • NTTデータ取締役相談役、TIS社長:会社で欲しい人材は、相手の言いたいこと、伝えたいことを引き出す質問ができる人間
  • TIS社長:TISが欲しい人材は新しい技術に挑戦し続ける人
  • IPA理事長:Google本社には6,000人開発者がいて、そのうち日本人が10名くらい。日本人10名のういち未踏ソフトウェア出身者3名いる
  • NTTデータ取締役相談役:Googleのソフトウェアの開発方法と日本のカスタムメイドなシステムを作る会社の開発方法は違う。Googleはスモールチームで仕上げる。日本は製造業のようにラインで仕上げる。
  • TIS社長:ITスキル標準のレベル5以上の人材を多く育てる必要がある

補足(11/1):@ITの記事と当日のパネラーの方の参加記

ITスキル標準の今後の方針

ITスキル標準の制定と新情報処理技術者試験ITスキル標準のリンクについて。時間が短かったのでざっとした説明だった。ITスキル標準は産業界ではかなり普及しているとのこと。

高度IT人材と日本の行く末

経済産業省は高度IT人材育成についてすごく興味をもって、実際に活動していますよという宣伝。ありがたいことだ。面白かったのは次の話。

  • 日本では、情報系学科は人気のない工学部の中でも特に人気がない
  • 中国では親が子どもが就いて欲しいと思う職業は医者かIT技術者とのこと

高度IT人材の育成を目指して

これは面白かった。有賀さんは歯に衣着せずという勢いで「何故、ITスキル標準の制定や情報処理技術者試験の新制度を作らなければならなかったのか」を説明してくれた。産業界の動向をさっぱりしらない身としては面白い情報ばかりだった。

面白かった話

  • 日本信号製の自動改札機のトラブルは昨年12月1日にも起こっていたが、JR東日本日本信号もどちらも自信のWebページで一言もその件について述べられていなかった。有賀さんは12月1日にコラムで指摘していたとのこと
  • 情報通信技術は既に社会的インフラになっているのにも関わらず、その認識が現在の企業の経営層に薄い。だから、不具合がおこったときの対応が40年前の対応。
  • ソフトウェアやハードウェアがコモディティ化し、ピュアIT投資だけでは生産性を向上させることは難しいインタンジブルなもの(無形の資産)への投資を行い経営革新も同時にする必要がある
  • ユーザ満足度100%だけれども値段が高いカスタムメイドなソフトウェアよりも、ユーザ満足度85%だけれども、値段がカスタムメイドなソフトウェアの数分の一、数十分の一なユーティリティソフトウェアをユーザ企業が選ぶ日がすぐそこまで来ている(株主総会でカスタムメイドを選んだ理由を説明できるか?)
  • ユーザ企業の要望どおりのシステムを作るのではなく、その業界の業務を調べ、抽象化してユーティリティなソフトウェアを作る能力を持つ人材が求められている
  • SaaS/ASPの開発競争で日本は戦えるのか?
  • カスタムメイド→SaaSへの移行に伴いユーザ側も開発者側と同じ程度の情報リテラシー(技術力ではなく知識)が必要となる
  • 日本のIT人材は高度人材が不足しており、ほとんどがSEとして存在している
  • 中国、インドは日本の10倍の情報工学系卒業者を毎年輩出している
  • ここで変化への対応を間違えると日本のIT産業競争力は長期的に低迷する可能性がある

すべての企業人(出身学部、学科問わず)が情報処理技術者試験新制度におけるITパスポート試験を通過し、ある程度のITリテラシーを持つことが好ましい。そして、情報工学出身者は専門知識に加え、経営学等の知識も必要とされるとのこと。

開発を夢のある仕事にするには

Seasar2開発者の比嘉さんの実体験からエンジニアは会社(組織)の外のコミュニティでも活動したほうが良いのではないかという提案。面白い体験談だった。ただ、講演タイトルからすると物足りない。開発の環境をどうやって変えていけば開発を夢のある仕事にできるのかについての提案が聞きたかった。比嘉さんが話されたのは「会社の開発現場では開発を夢のある仕事にできないので、外に夢のある環境を作ろう」という話だったと思う。

だれの言葉だか忘れたけれども「私益の追求が他益となり、他益の追求が公益となる」&「情けは人のためならず」を地でいく話だったのでうちの研究室の学生にも聞いて欲しかった。

組込システムのセキュリティの現状と対策

興味深かったのだけれども、

  1. 明治記念館内で自動販売機をみつけられず、3時間ぐらい水分を取れず喉がからからだった
  2. すごく眠くて、講演の4分の3寝てしまった

ので、集中して聞けなかった。けれども、組み込みソフトウェアでバッファオーバーフローを試みるのにはチップの解析が必須という話には驚いた。私は組み込みソフトウェアの知識がほとんどなかったので、ソフトウェアの開発にハードウェアがここまで結びついていることに驚いた。技術のトレンドは循環するなぁ。

喉が渇いたのとあまりの眠気にあと1つ講演があったけれども撤収。

お土産

IPAフォーラムではいろいろな冊子をもらったが以下の冊子は非常によい冊子だった

特に「オープンソースで構築!ITシステム導入虎の巻」は素晴らしい。一通り読めばオープンソースソフトウェアに関する話題で出てくるキーワードをざっと覚えられる。言葉を知らないと検索もできないので、最初に読む本としてはぴったり。