基礎からわかる情報リテラシー

奥村晴彦先生の本。はじめにが素晴らしいです。

Windows VistaMicrosoft Office 2007など、特定のソフトの特定のバージョンの使い方を解説した「マニュアル本」は、巷にあふれています。しかし、それらは明日には役に立たなくなるかもしれません。それどころか、目の前にあるコンピュータがMacLinuxなら、今日でも役に立ちません。

もうちょっと基本的なレベルで勉強しておけば、何年たっても、どんな環境でも、役に立つはずです。

まったくおっしゃる通り。高校や大学卒業後、ずっとWindows OSがある保証はないですし、MS Officeが今後もずっとオフィスソフトウェアの中心であるかどうかも定かではないですからね。実際にこの本の内容はWindows OS, Mac, Linuxの共通的なポイントを示してくれています。

以下、気に入った部分を列挙します。

  • p.3:Windowsのログイン時にCtrl + Alt + Delを押してログインする癖をつけなさいという記述
  • p.3:うまくログインできない理由としてCaps lockとShift + Caps lockを指摘している点。あと、1とlとI、Oと0が間違えやすいと指摘している点
  • p.4:パソコンの電源スイッチは数秒間押し続けないと電源が落ちないようになっていると指摘している点
  • p.8:ダブルクリックはお年寄りにとって難しい操作なので右クリックして「開く」を伝えましょうという点。確かに勉強になります。
  • p.9:エラーメッセージは携帯のカメラでとって、それを見せて相談しましょうという提案。今の学生は全員携帯を持ち歩いていますもんね。
  • p.13:文字コードの説明があるところ。初心者が複数の環境を使うときに困る第一位だと思います。
  • p.29:フリーメールアドレスについて大学教員の立場から述べていること。全面的に同意します。
  • p.30:悪いメールの例とよいメールの例をのせているところ。(ただし、これは立場や組織によって基準がかわります。あくまでも大学の学生に対する例です)
  • p.31:携帯メールとPCメールの違いについて言及しているところ。最近は携帯メールから始めている人が多いのでもう文化が違うといってよいです。教えなければわかりません
  • p.35:メールのエンコーディング。私は何故、7ビットの範囲で表さなきゃならなかったのか知りませんでしたので勉強になりました。
  • p.36:メールは確実な通信手段ではないということを指摘している点。最近はインフラが整っているので忘れちゃうんですよねこういうところを。
  • p.69:Wordを使う際のフォントについて言及しているところ。さすが、TeX Wikiの運営者。
  • p.100:プレゼンテーションの際のデュアルスクリーンの使い方について言及している点。確かにこれが使えなくて発表時に時間を食っちゃう人がたくさんいます。私はそもそも使えないのでこの機能を使っていませんが。
  • p.102:PowerPoint以外の発表方法(PDFを例として)に言及している点
  • p.108:チルダの打ち方について説明している点。たしかに初心者の質問の典型例ですね。
  • p.117:検索エンジンの使い方の説明前にウェブ上の情報が必ずしも正しいとは限らない点に言及している点。教科書や新聞は正しいという概念が叩き込まれていると文字ベースの情報を無条件で信じちゃうのではないかと思っています。
  • p.124:キロ、メガ、ギガの話。10の乗数なのか、それとも2の乗数なのかが実は表記によって分かれているとのこと。勉強になります。

実際にこの本を授業の教科書で使うというので評価すると、少し使いづらいように思います。理由は、複数のOSが触れる環境になければこの本の最初の方の重要性が理解できないからです。実際に三重大学ではこの本の内容で授業しているのでしょうか。この本を教科書とし、それぞれの単元を使用しているOSごとに副教材を用意すればよいのかな。実際に学生が複数の環境を使わなければならなくなったときに、この本が手元にあると自分のなじんでいるOSとの対応関係がわかって役に立つと思います。

この本をひととおり授業として展開できたならば、情報リテラシーの授業としては十分だと思います。できれば、ファイルの圧縮と解凍、フリーソフトウェアのインストールとアンインストールの方法が載っていたらよりよかったと思います。