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 修士課程(博士前期課程)進学はもう特別な話ではない

発声練習 大学

注意:筆者は、工学系の大学院修士課程→博士課程→大学教員というキャリアです。かなり大学よりのバイアスがかかっていますので、注意してください。

Webページでは、大学院修士課程(博士前期課程)の進学がまだ特別のことのように言われているけれども、既に時代は変わり、もう特別な選択肢ではなくなっていると思う。文部科学省中央教育審議会の資料新時代の大学院教育−国際的に魅力ある大学院教育の構築に向けて−附属資料を見つつ検討してみる。(Googleで「大学院 進学率」で検索したらヒットした)。

まず、もう大学院修士課程進学は研究者への登竜門にすらなっていないことがポイント。
資料9:大学院の課程の目的等の主な変遷(PDF)によれば、昭和49年の大学院設置基準の制定により、従来の研究者を育てる教育一本やりから専門技術者を育てることも義務付けられた。

修士の学位を与える課程は,学部に於ける一般的並びに専門的教養の基礎の上に,広い視野に立って,精深な学識と研究能力とを養うことを目的とする

がこう変わった。

修士課程は,広い視野に立って精深な学識を授け,専攻分野における研究能力又は高度の専門性を要する職業等に必要な高度の能力を養うことを目的とする。

なお、資料16:我が国の学位制度の主な変遷(PDF)修士、博士の位置づけが変わっているのが分かりやすい。

また、大学院進学率はここ十年くらいは十数パーセント。2005年度は14パーセントになっている(資料28:大学院入学者数の実績(修士課程,博士課程)より)。分野別では何故か基本となる数値が違っている(進学者数が何故か少ない)が、
理学部・工学部・農学部は32.4%。薬学部が29.0%で他の学部は一桁となっている(資料31:大学院への進学者(学部卒業者の進路状況)(PDF)より)。理・工・農学部の大学院進学率は、平成5年(1993年)くらいの大学進学率とほぼ同じになっている。全体の大学院進学率は昭和40年始め(1965年)くらいの大学進学率とほぼ同じ(平成17年度学校基本調査速報について:参考図表7より)。

年齢でいえば、理工農系の大学院進学率は、35歳前後の人が大学受験をしたころのの大学院進学であり。全体の大学院進学率は、現在60歳前後の方々が大学受験をしたぐらいの大学進学率と重なる。よって、分野によっては大学院修士課程進学はいまだ「入院」であると思うが、理工農系の大学院修士課程進学はもう「入院」ではない。

私が大学受験したときの大学進学率はおよそ35%。既に大学行くのが当たり前の高校と行かないのが当たり前の高校に分かれていた。理工農系の大学院修士課程進学に関しては、同様に大学や学科によって行くのが当たり前なところとそうでないところがはっきりと分かれていると思う。その根拠は、大学院別の定員充足率。

もし、修士課程進学がまだ、入院と呼ばれるように特殊な進路であるならば充足率は割っているのが当然。資料29:大学院の入学定員の充足率(PDF)によれば、資料29の学部別充足率をみればよく分かる。進学率が低いところの充足率は低い。一方、進学率が高い学部の充足率はほぼ100%超え。たぶん、正のフィードバックがかかっている(進学率が高いのでみんな進学する。よって、進学率がさらに上がる。逆も一緒。)。ただし、定員充足率を満たさないと大学にペナルティが文部科学省から課せられるので、たぶんに人集めをしているのは確か。また、定員の数パーセントまでは多く入学させて良いので大学や専攻によってばらつきはある。

また、出口も昔とは異なる。2005年度(平成17年度)の大学卒業者の進路内訳は、進学12.0%、就職59.7%、その他28.3%となっている(資料31:大学院への進学者(学部卒業者の進路状況)(PDF))一方、大学院修士課程修了者の進路内訳は、進学13%、就職68%、その他14%である。資料35:大学院の修了者数等の推移(PDF)によれば、平成6年(1994年)から一貫して就職率は60%台となっている。大学院修士課程修了者数が平成6年から平成17年でおよそ2倍になっている。

一方で、同時期の大学卒業者の就職率は落ちている。平成17年度学校基本調査速報について:参考図表11によれば、大学卒業生の就職率は平成3年の81.3%から50%台後半に向けて減少している。なお、平成3年から平成17年にかけて卒業者数はおよそ25%の増加と見える。グラフからの大雑把な見かただけれども、平成8年(1996年)ぐらいで、大学院修士課程修了者の就職率と大学卒業者の就職率が逆転している。よって、修士課程修了者の就職が社会的に認められる(企業からの需要がある)ようになったと考えられる。また、修士課程に進学したことが原因で就職できないというのも数字からいえば、強く主張できないと思われる。

調べてみたところ、思いのほか卒業生に占める大学院修士課程の進学率は低かったが、理工農の分野においては大学院進学は入院と呼ぶに値しない。少なくとも1990年代の大学進学とほぼ同等にみて良いと思われる。なので、理工農の分野の学生であるならば、ぜひ大学院修士課程の進学を検討していただきたい。なお、博士課程(博士後期課程)の話はまた異なる。