[メモ] 科学的な事実と非科学的な事実。科学的に説明できることと科学的に説明できないこと。

水からの伝言は科学でない」という言葉もあいまいな意味を含んでいるような気がするので、何が「水からの伝言は科学でない」のかを自分なりに整理。

科学的な事実とは、同じ条件の下で同じ手続きに従えば誰がやっても同じ出来事が生じるという事実のこと。科学的事実には再現性がある。非科学的な事実とは、科学的事実でない事実のこと。すなわち、再現性のない事実。

科学的に説明できるとは、ある科学的な事実が起こる理由を既知の科学的事実とそれらの既知の科学的事実を説明する理論を用いて説明できること。科学的に説明できないとは、ある科学的事実が起こる理由を既知の科学的事実とそれらの既知の科学的事実を説明する理論を用いて説明できないということ。

科学的な事実の反対語は「非科学的な事実」であって、「科学的に説明できない」ではない。科学的に説明するためには、説明しようとする事実が科学的事実でなければならない。そして、科学的事実だからといって、その事実の起こった理由を科学的に説明できるとは限らない。この科学的事実なのに、その事実が起こった理由を説明できていない問題を未解決問題(Open Problem)という。

水からの伝言で使われている実験は、そもそも科学的事実でないというのが、「水からの伝言」を信じないでくださいの立場。科学的事実ではないので科学的に説明できるかどうかを論じるのはナンセンスであるということ。科学的事実でない事柄に対して、反証実験はできない。なぜならば、反証実験とは、ある事実が科学的事実ではないということを明らかにすることであるからだ。その事実がそもそも科学的事実でないのであれば、反証実験を行っても何も明らかにすることができない。

ある観察対象の出来事が起こる条件を集合C、手続きの集合P、材料の集合M、その出来事を観察した人の集合をHとすると、ある観察対象の出来事の発生は(C,P,M,H)の4つ組で表される。科学的事実とは(C,P,M)が同じであるとき、いかなるHでも常にその観察対象の出来事が発生することといえる。非科学的事実はそうではない。反証実験は、ある(C,P,M)に対して観察対象の出来事が発生しないことを証明する実験である。なので、(C,P,M)が決まっていない出来事に関しては、反証実験でつかった(C1,P1,M1)という3つ組に関してのみ、観察対象の出来事が発生しなかったということだけしかいえない(まあ、これは(C1,P1,M1)のときにその観察対象の出来事は発生しないという科学的事実なのですが)。よって、非科学的事実においては(C,P,M)が決まっていないので反証実験をどれだけやれば、その観察対象の出来事が起こらないことを証明できるのかわからない。

これはそもそも証明という手続きが、証明する対象をはっきりとさせていなければならないということに由来する話であるので、科学者が怠惰とか、傲慢とかという話ではない。