メディアの興亡

メディアの興亡

「コンピュータの名著・古典100冊」で紹介されていた本。

日経新聞朝日新聞で始められたコンピュータを用いた紙面作成プロジェクトを軸にして、朝日、毎日、読売、日経の4紙の1970年代ごろの状況を対比させつつ描かれています。基本的に、「事件→関係者の登場→関係者の来歴紹介」という形で話が進むため読みにくいと思いましたが、話の内容が面白いので楽しんで読み終えられました。

「コンピュータの名著・古典100冊」で紹介されていた本であったので、話のメインはコンピュータを用いた紙面作成の部分かと思いきや、実際は活字を用いた紙面作成からコンピュータを使用した紙面作成へと移り変わるあたりの新聞社、またそこで働く人々についての話がメインでした。

この本を読み終わって、今まで疑問であったいくつかのことが解決されたのが嬉しい誤算でした。

1. なぜ、日経**という形の雑誌、特にコンピュータ関係の雑誌が
たくさん出版されているのか?

この答えは第二部の日経円城寺社長の言葉からわかります
「〜前略〜 コンピュータで新聞をつくる場合、記事はすべていったんコンピュータの中に叩き込まれる。しかし、それを単に新聞づくりだけに使うのではあまりにももったいない。記事の中には毎日の株の値動きや会社の人事異動、決算データもあるだろう。それらを五年も十年も前にさかのぼってあつめていけば、会社四季報を数百倍詳しくしたようなものがつくれるのではないか。 〜中略〜 要するに、同じ一つのデータでも料理の仕方を少し工夫すれば、新聞とはまったく違った商品がつくれてしまうというわけだ。一石二鳥というやつだよ。」

2. 渡辺恒雄氏は、なぜあれほどの影響力をもつのか?

下巻、第三部「顔役」に詳しくかかれていました。

3. なぜ「大朝日」というのか?

私が物心ついたころには、新聞部数No.1は読売新聞でした。それに次ぐのが朝日新聞、以下、毎日、日経です。ですから、なぜ朝日新聞が「大朝日」と呼ばれるのかさっぱりわからなかったのですが、昔は朝、毎、読の順番で部数があったのですね。

4. なんで、日本の全国紙は政府べったりなのか?

メディアの興亡の中で常に中心となっている話題が、新社屋建設です。
戦後、新聞各社が広告による収入を増やすにつれ、紙面数も増やさなければなりませんでした。紙面数を増やすには新聞を刷りあげる時間を短縮する必要があります。新聞を刷り上る時間を短縮する一番の方法は、輪転機を増やし、パイプライン式に新聞を作成することです。このパイプライン式に輪転機を配置するスペースを確保するために、広い敷地を持った新社屋が必要とされていたのです。

そして、都内の新聞社が新社屋を建てるために狙ったのが国有地の払い下げです。国有地の払い下げの際に新聞社と政府の間に関係が生じ、この関係が新聞が政府に対して遠慮する原因となっていると思われます。

第五部、「失速」で毎日新聞のスキャンダル「西山事件」とニューヨークタイムスのルポ「ベトナム・ルポ」との比較で上記のことがかかれています。