わからないことを質問なしで解消するのは難しい

はてな匿名ダイアリー:他人から質問攻めにされてうれしい人ってあんまりいないと思うより

大学教員とかよく「最近の学生は無気力で、講義のときもロクに質問すらしない!」って嘆いてるのはてダとかでもたまに見るけど、
学生のほうとしてはそもそも「他人(教授に限らず、一般に自分とあまり関係ない人)を質問攻めにしたい欲」ってあんまり無い気しかしない。
だって普通に質問攻めにされるのってうざいじゃん?「自分がされたくないことは他人にもするな」が黄金律じゃん?
なんで"知的"な人ってそんな他人を質問攻めにして平気な神経でいられるんだろうか、ホント空気読めないやつらだと思う。

大学教員だって「他人を質問攻めにしたい欲」はもっていない。「わからないことをわかるようにしたい欲」は旺盛に持っている人多いけど。

質問というのはわからないという状態を解決するための基本技術。なので、この技術を身に着けないと、「わからない」が頻発し、その「わからない」を自分で解決しなければいけない立場や職業についたときに困ってしまう。本などの何かしらのメディアを用いて自分で調査するときでさせ、自分自身に何について明らかにしたいのかを質問しないといけない。

本当に心配なのは、わかるべきことについて「わからない」という状態をそのままにしておいて対応しないということで、「質問しない」というのは「わからない」という状態をそのままにしているという指標になるので、「質問しない=心配/憂慮すべきこと」となっているのだと思う。わからないことがないならば別に質問する必要はない。

あと、上記エントリーのブックマークコメントに以下のコメントがあった。

そういうの口にするのは実際質問したら「あとの授業でおしえる」とか「そういうのは自分で調べて」とか「そこは自分で考えて」とか返してくる質問する価値のない人だらけなのでスルーで。自分が悪い可能性考えてない

せっかく質問してこういう反応が返ってきたらがっかりするとは思うのだけど、一方で、こういう反応も適切な回答なときがあるのでなかなか難しい。必ずしも、希望する答えがもらえることが「回答」ではないので。たとえば、一番時間を使って、いろいろ引き比べて検討して欲しい事柄について「~について教えてください」と質問されたら「そこは自分で考えてみて」と返答するしかない。来週説明する予定のことについて質問されたら「次の授業で説明します」としか答えられない。

大学教員の給与が明らかにの話

2014年のエントリーが今話題になっている。国立大学法人の給与は各大学の教育職俸給表で大体わかる。

私立大学まで含めた給与については大学教授、大学准教授、大学講師の給料・年収によると厚生労働省:賃金構造基本統計調査で調べることができるらしい。みてみたところ平成27年賃金構造基本統計調査(順次掲載予定), 一般労働者, 職種の表に諸手当込み、保険料・税引き前(つまり、支払い総額)の月給と賞与の年額(いわゆるボーナスなど)が記載されている表があった。

「第1表  年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額」と「職種別第2表 職種・性、年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額」から年収表を作成した。計算方法は両方の表の「きまって支給する現金給与額×12か月+年間賞与その他特別給与額」とした。「きまって支給する現金給与額」と「年間賞与その他特別給与額」の言葉の定義は賃金構造基本統計調査:用語の解説を参照のこと。

「 企業規模10人以上、大卒以上」は「第1表  年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額」の男女計・大学卒・企業規模計(10人以上)のデータを用いている。その他の「自然科学系研究者(男)」「システム・エンジニア(男)」「システム・エンジニア(女)」「 保育士(保母・保父)(女)」「高等学校教員(男)」「大学教授(男)」「大学准教授(男)」は「職種別第2表 職種・性、年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額」よりデータを取ってきている。保育士、高等学校教員、大学教授、大学准教授は男女で給与に差がないだろうと考えて片方で全体を代替させている。

ブログの横幅の問題で「 企業規模10人以上、大卒以上」「システム・エンジニア(男)」「システム・エンジニア(女)」の年齢階級別平均年収。システム・エンジニアで男女間にこんなに差があるとは。平均年齢が男38.8歳、女34.8歳、超過実労働時間が男22時間、女17時間の差が給与の差になっているのだろうと思う。

年齢区分 企業規模10人以上、大卒以上 自然科学系研究者(男) システム・エンジニア(男) システム・エンジニア(女)
全年齢 \704.87 \658.75 \611.10 \494.27
~19歳 \0.00 \197.40 \203.28 \279.34
20~24歳 \320.07 \299.95 \355.07 \334.56
25~29歳 \406.62 \472.27 \493.69 \446.48
30~34歳 \683.89 \488.05 \566.70 \551.74
35~35歳 \614.43 \661.52 \630.39 \546.74
40~44歳 \733.98 \714.20 \687.67 \565.34
45~49歳 \813.21 \833.05 \729.16 \601.60
50~54歳 \908.36 \865.74 \706.98 \584.69
55~59歳 \953.37 \908.02 \746.48 \580.67
60~64歳 \947.62 \635.76 \521.24 \292.11
65~69歳 \917.85 \342.26 \425.38 \0.00
70歳~ \670.00 \1,008.72 \303.24 \0.00


今話題の保育士も並べてみた。こうやってみると、大学へのお金を減額されるときついけど、大学は2010年あたりまでの復帰で良いので残りは未就学児童教育・保育に突っ込んであげてほしいところ。

年齢区分 企業規模10人以上、大卒以上 保育士(保母・保父)(女) 高等学校教員(男) 大学教授(男) 大学准教授(男)
全年齢 \704.87 \322.13 \705.88 \1,099.88 \869.41
~19歳 \0.00 \0.00 \0.00 \0.00 \0.00
20~24歳 \320.07 \263.47 \332.83 \0.00 \0.00
25~29歳 \406.62 \304.68 \441.54 \0.00 \485.27
30~34歳 \683.89 \312.95 \545.44 \589.80 \683.89
35~35歳 \614.43 \334.62 \651.27 \939.46 \752.08
40~44歳 \733.98 \352.12 \772.01 \992.59 \847.17
45~49歳 \813.21 \366.13 \802.09 \1,011.99 \890.44
50~54歳 \908.36 \373.86 \903.45 \1,096.40 \936.44
55~59歳 \953.37 \406.52 \901.96 \1,132.80 \930.58
60~64歳 \947.62 \400.73 \731.87 \1,165.02 \965.86
65~69歳 \917.85 \478.49 \631.97 \1,039.73 \1,061.89
70歳~ \670.00 \480.84 \546.16 \706.87 \0.00

高山佳奈子(京大職組委員長)のブログ:京大の給与明細を公開しますにある年収は、教授45歳のものなので大学教授の年齢階級別平均年収からすると数十万円低い。大卒・企業規模10人以上の年齢階級別平均年収からすると百数十万円高いという給与。

保育士の給与の話

はてな匿名ダイアリー:保育園落ちた日本死ね!!!から発した保育所の拡充問題がニュースで話題になっている。で、ふと思い出すと数年前に公営保育所の保育士の給与が高いので保育所が増えないという話が話題になっていたように思う。読み返してみると、公営保育所の保育士の給与が高いのでではなく、保育料が低く固定されているので応能負担ができていないという話だったが、とにかく2009~2010年に一回保育所話は盛り上がっていた。

一方で、2015年の現在は保育士の給与が低いという話がでている。

 「厚生労働省などが保育士の賃金を調べていますが、13年の調査では、保育士の賃金は月額20万7400円。これは公立も私立も含めた統計なので、もっと低い人もいます。全産業の月額平均29万5700円を大きく下回ります。幼稚園教員は21万9600円で、小学校教員は33万1600円です。保育士を教育の職員としてみている国では学校教員との給与格差はありませんが、日本は福祉職なので、格差が大きいと言えます。それに『ただ子どもと遊んでいるだけ』という保育士に対する誤解もあります」

さきほど、大学教員の給与が明らかにの話のエントリーを書く際に厚生労働省:賃金構造基本統計調査を眺めた時にも実際に給与が低いことを確認した。

じゃあ、給与が高いと言われてた2009年の給与はどうだったんだろうと思って調べたのが以下のグラフ。左のY軸は300万円から始まっているので注意。このグラフは厚生労働省:賃金構造基本統計調査の「職種別第2表 職種・性、年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額」より作成している。本来は対照となる職種と比較すべきだったのだけどやり忘れたので割愛。2013年を底に2004年から10年かけて20万円年収が下がっている。一方で、平均年齢は3歳ほど上がっている。通常は年齢あがると給料あがるので給与は相当あがらない(あるいは減額)されているということ。

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保育士の年齢階級別のボリュームゾーンは35歳ぐらいまでなので、年齢が高い人と一部の保育士はやめずに勤務し続け、若い保育士は一定期間で止めるということで平均年齢がぐんぐんあがっているのではないかと思う。で、その一部の止めない保育士はもしかして非婚化しているじゃなかろうか?


上のグラフの生データは以下の通り。2007年までは65歳上限、2008年からは70歳上限。

2015 2014 2013 2012 2011 2010 2009 2008 2007 2006 2005 2004
平均年齢(歳) 35.2 35.1 34.9 35.3 34.8 33.8 33.9 33.6 33.1 32.9 32.5 32.5
平均年収(万円) 322.13 314.22 309.12 314.44 320.74 323.11 326.64 320.03 322.4 326.72 326.76 339.51
    ~ 19歳 0 0 0 0 225.72 162.48 0 0 215.52 0 224.08 201.56
 20 ~ 24歳 263.47 257.37 250.29 261.85 250.86 264.19 264.9 252.29 254.18 256.48 258.11 268.43
 25 ~ 29歳 304.68 293.96 289.78 287.07 299.08 303.73 309.62 297.33 308.34 306.87 310.87 321.24
 30 ~ 34歳 312.95 306.29 304.95 314.99 322.45 325.11 328.18 324.43 331 331.55 334.69 351.53
 35 ~ 39歳 334.62 326.92 341.92 320.01 347.14 351.97 343.27 355.74 341.21 356.32 359.61 345.88
 40 ~ 44歳 352.12 351.89 351.02 331.16 351.08 348.89 361.76 371.21 357.42 368.95 381.58 397.62
 45 ~ 49歳 366.13 347.53 338.96 355.95 366.28 357.93 387.47 380.56 385.09 396.24 412.12 420.18
 50 ~ 54歳 373.86 365.35 357.82 378.93 388.12 419.37 393.23 408.65 427.82 437.47 404.56 478.16
 55 ~ 59歳 406.52 409.8 391.96 419.04 440.93 435.71 444.11 432.46 505.29 502.23 497.75 512.82
 60 ~ 64歳 400.73 420.58 422.27 390.24 475.7 400.46 402.37 423.56 431.03 556.6 527.11 557.69
 65 ~ 69歳 478.49 434.24 536.29 461.4 491.51 641.23 580.57 724.28 527.27 538.55 553.13 604.84
 70歳~ 480.84 635.16 544.39 458.28 405.2 737.67 655.47 540.73 0 0 0 0