卒業研究につまづいている人へ:範囲を決めてとりあえずザッと終わらす

GTDでお馴染みのデビッド・アレンさんの受け売りだけれども
「知的労働は基本的に終わりがない。だから、ストレスフリーに知的労働を行うためには区切りは自分でつける必要がある。」

私が見聞きした学生さんが卒業研究でつまづく際の典型例が「細かいところに執着し、しかも、その部分すら終わらせることができずに燃え尽きる」というもの。これが発生するする原因は以下のとおり。

  1. 卒業研究の目的(もしくは今行っている作業の目的)を理解していないため、終着点(作業の終わり)をイメージできていない
  2. 終着点がイメージできていないので、今、こだわっている部分の重要性を見積もることができない
  3. 終着点がイメージできていないので、今、こだわっている部分をどれぐらい深く(細かく)行えば「今のところは」十分なのかがわからない

研究は正解のない作業であり、正解がない作業はとりあえずやってみないと課題が何かすらわからないことがあるので、とりあえず終わらせていることが重要。ここいらへんは、ソフトウェア開発のアジャイル開発やエクスストリーム・プログラミング(XP)でも良く言われていること。最近の漸進的ソフトウェア開発手法の際によく言われるのが「将来必要になるかもしれない機能は、必要になったその時に追加すればよく、今は追加するな!」ということ。これは卒業研究でも一緒。

卒業研究の目的あるいは今行っている作業の目的がはっきりと理解できていなければ、何が今必要な事柄であり、何が今は必要ではない事柄なのかを判断することができない。なので、まずは、卒業研究の目的や今現在行っている作業の目的をはっきりさせるべき。自分で決められるならば自分で決め、ダメなら先輩や先生の知恵を借りる。先生はこのために給料もらっているんだから遠慮しなくてもよい。

目的がはっきりしたら、当面の終了条件を決める。「当面の」という制限をつけた理由は、必ずしも一度の作業で卒業研究の目的や行おうとしている作業の目的を完全に達成できるとは限らないから。たとえば、木工工作のやすりがけを思い浮かべてもらえばよいと思う。作業目的は作った品の表面をなめらかにすることだけれども、最初は粗くヤスリをかけ、徐々に目の細かいヤスリで仕上げていき、最後はツルツルにする。いきなり、目の細かいヤスリでツルツルにしようと試みるのは、できないことはないけれども、うまいやり方ではない。

当面の終了条件を決定したならば、自分の中の完璧主義な面には旅行に行ってもらい、当面の終了条件をぎりぎり満たす品質で作業を行うべし。品質の向上は2回目以降に実施する。正解のない事柄においては、品質とは常に理想とどらくらい距離があるかということ。かなり頑張ってもたどりつけないのが理想なのだから、ちょっとずつちょっとずつ理想に近づけていくべき。ある部分だけいきなり理想に到達ということはありえない。

当面の終了条件を満たしたならば、満足できようができなかろうが作業を終了すること。そして、作業過程で得られた知見や作業結果を考察すること。場合に寄っては、当初立てていた解決法や実現方法、作業計画に対してネガティブな結果がでているかもしれない。かなり、レアだけれども研究目的に対してネガティブな結果すらでている可能性がある。でも、これが研究!答えが分かっているならば研究する必要はない。勇気をもって、解決法、実現方法、作業計画、研究目的を修正しよう。一人で行うのが難しいならば、先生や先輩の力を借りるべし。

メタ卒業研究と卒業研究で目的と手段をごちゃまぜにしない

ボスとお昼を食べながらしていた会話より覚書。

  • 卒業研究の位置づけは学生ごとに異なる
    • 就職先が決まっており卒業自体が目的の学生にとって卒業研究は取得すべき「単位」
    • 大学院進学が決まっている学生にとって、卒業研究は「研究の練習(体験)」
  • 卒業研究の位置づけに応じて適切な研究の目的(ゴール)を定めるべき
  • 研究の重要性と必要性は目的そのもので評価される
  • 研究の目的が妥当なものだとみなされた後は、その目的をどのようにどこまで達成できたかが評価のポイント
  • 研究の目的が決定した後は、研究の目的を達成することを至上命題として、行うべき作業を決定し、作業を進めていく必要がある
  • すなわち、メタ卒業研究と卒業研究で目的と手段が異なっている
    • メタ卒業研究の目的:卒業研究を通して何を学ぶか?(単なる単位と研究の練習)
    • メタ卒業研究の手段:学生ごとの卒業研究の位置づけに応じて適切な卒業研究の目的を定める
    • 卒業研究の目的:ある問題があり、その問題を解決/緩和する方法を提案し、その有用性、有効性を実証する
    • 卒業研究の手段:目的を達成するために必要な事柄をすべて行う
  • 卒業研究の難易度は卒業研究の目的で調整する
  • 卒業研究の位置づけが学生ごとに異なろうが、卒業研究の目的を達成できていなければ等しく卒業させるべきではない
  • 学生はメタ卒業研究の目的と卒業研究の目的をごっちゃにして考えてしまうのでこの二つを区別させるようにしないといけない

追記

コメント欄のkwsmさんとのやりとりをエントリーとしてまとめた。