COVID-19対策のために文科省は学校に診断名を求めないよう指導してほしい

提言

少なくともCOVID-19の簡易検査法と治療法が確立されるまで文部科学省は各種学校に以下のことを行うように指導してほしい。

  1. 追試験や各種手続きの締め切り後対応の際に、COVID-19やインフルエンザなどの診断名を要求しないこと。
    • 本人の申請に基づきその病気を認めるか、一切考慮しないかのどちらかの対応をとる。
    • 診断名を確定させるために、安易に医療機関の受信受診を勧めない。
  2. 高校および大学の授業・講義の単位認定において出席日数を考慮しないこと。
    • COVID-19が疑われる場合は2週間自宅で療養することが推奨されている。この場合、週1回開講の授業・講義ならば2回分、週2回開講なら4回分欠席することになる。単位の取得に一定の出席以上を求めると、無理して登校することになる。
  3. 高校および大学の授業・講義の単位認定において、課題の提出締切および提出方法について考慮すること
    • 定期試験時やレポートの提出時に自宅待機してしまうと単位を落としてしまう。そこで、レポートで代替させたり、電子的に受験・提出できるようにしたり工夫する。

本文

2020年3月9日に新型コロナウイルス感染症対策専門家会議より「新型コロナウイルス感染症対策の見解」が出されている。その中で以下の文がある。

先週まで報告が少な かった 諸外国において 、患者 数が 急増しています。 これまで渡航の制限がなかった 諸外国 や国内 の人々との間の往来や交流 が 既に積み重ねられています 。しかし 、 全て の感染源(リンク) が 追えて いるわけではないので、 感染の拡大が 、 既に日本各地で起きている可能性 も あります。よって、 今回 、 国内での 流行を いったん 抑制できたとしても、 しばらくは、 いつ再流行してもおかしくない状況が続 くと見込まれます。 また、 世界的な 流行が進展していることから、国外から感染が持ち込まれる事例 も、 今後 、 繰り返 される ものと 予想されます。

このことから、COVID-19の治療法が確立されるまでは、重症患者のために医療資源を確保しつつ、日常生活を送ることが必要となる。以下の図のような考え方。

で、2月からの大学入試で気づいたのだけど、大学は受験生の注意として「COVID-19であると診断された場合は・・・」というように追試験を認めるときなどに診断名を求めている。たとえば、大学入試センター試験「受験案内のp. 50の「追試験」の項に以下の記述がある。

1. 追試験の対象者
ア. 疾病(インフルエンザ・ノロウィルス・風邪などを含む)・負傷により試験を受験できない者

https://www.dnc.ac.jp/albums/abm00035724.pdf によると疾病・負傷による追試験を申請する場合には診断書が求められる。上の文書の p. 14に以下の記述がある。

本人又は代理人が、受験票に記載されている「問い合わせ大学」に電話連絡した上で、申請受付時間内に「受験票」と「医師の診断書」(治療期間が明記されたもの)を「問い合わせ大学」に持参し、申請してください。許可された場合は追試験受験許可書が交付されます。

もともと、インフルエンザでも学校が診断結果と診断書を求めるため、医療機関がこまっているという話があったが、COVID-19の簡易検査や治療法が確立するまでは、COVID-19によって、より状況が悪化することが予想される。

実際に講義や単位認定を行う大学教員の1人としては、柔軟な対応をとることを大学、ひいては文科省が認めてくれるならば病気の診断書は不要と考えている(なんの理由であっても講義にでていないのだから、本人が追加で勉強するしかないし、追加で勉強するなら問題ない。本人がどうにもできないことで試験に参加できないなら、レポートで代替するのはしょうがない)。

医療資源を重症者に割り当てるために少なくともCOVID-19の簡易検査法と治療法が確立されるまで文部科学省は各種学校にインフルエンザやCOVID-19などの診断名を求めないように指導してほしい。こういうのは地味だけど、恐れながら日常生活を送るために必要な措置だと思う。

COVID-19対策に伴う留学生へのビザ発給停止に関する提言

はじめに

2020年3月9日から中国および韓国人に対するビザの発給停止および発給済みビザの無効化か行われた。中国人は日本の入国にビザが必要なので早くとも3月末日までは日本に入国できない。

本件措置の中には,以下のとおり査証の制限等の措置が含まれています。これらの措置は,3月9日午前0時から運用が開始され,3月末日までの間,実施します(この期間は更新され得ます。)。
(1)中国及び韓国に所在する日本国大使館又は総領事館で発給された一次・数次査証の効力の停止
(2)香港及びマカオ並びに韓国に対する査証免除措置の停止

本件措置により,以下の方は3月9日午前0時以降,日本に入国できなくなります。
(1)中国及び韓国に所在する日本国大使館又は総領事館で発給された一次・数次査証に基づき日本へ入国しようとする方
(2)香港,マカオ及び韓国の旅券保持者で日本の査証を取得せずに日本へ入国しようとする方
新型コロナウイルス感染症に関する水際対策の抜本的強化:査証の制限等について|外務省より)

この結果、うちの大学院に入学が決まっている中国人留学生が日本に入国できず、合格手続きができない事態が発生している。また、3月末日までビザの発給が停止されているため、3月中にビザを申請して、ビザが4月1日に発給されたとしても来日は4月上旬にずれ込む見込みとなる。結果として、入学式や新入生ガイダンスに間に合わない。下手すると履修登録に間に合わない。

アメリカやヨーロッパの様子をみるとこのビザ発給停止対象国は今後拡大される蓋然性も高く、4月で日本の方でCOVID-19対策が解除されるのかどうかもわからない。そこで、以下のことを提言したい。

大学への提言

「入学料および授業料が支払われなかったとしても無料で半期の休学を認めてほしい」

来日できないのに大学の在籍期間が増えるのは学生の選択肢を狭めてしまう(多くの大学で修業年限の2倍の期間を越えると除籍扱いになる)。また、履修登録や講義の成績評価などについて特例扱いするのはそれなりにコストがかかる(いつ、登校できるようになるかでその大変さが大きく変わる)。そこで、入国が難しい時期に関しては休学を認めるべきだと思う(休学中は在籍期間にカウントされない)。

しかし、多くの大学では入学料が支払われないと除籍になる。また、授業料が支払われないと休学が認められない。また、私立大学では休学時にも授業料支払いが発生するところもある。

今回の特例として問題なく来日できる状況になるまで、入学料および授業料が支払われなかったとしても無料で半期の休学を認めるようにしてほしい。特例で入学料免除を申請した該当留学生については無条件で入学料免除するのも一つの手だと思う。国際送金は大きなコストがかかる。

文科省への提言

  • 「上述の特例処置を検討するように大学に通達を出してほしい」
  • 「2020年度入学者の定員管理を特例として緩めてほしい」
  • 「ビザ発給停止対応国出身の留学生に対してアパートの貸し出し拒否などをしないよう通達を出してほしい。」
  • 「大学が寮などを持っている場合は、ビザ発給停止対応国出身の留学生用にある程度提供できるように準備するよう通達を出してほしい」

国立大学は文科省に文句言われるのが怖いので基本的にお金関係で独自対応できない。なので、文科省から通達出してほしい。

追記:2020年3月16日

2020年3月6日付けで文科省から留学生に対する通達がでていた。新型コロナウイルスに関連した感染症対策に関する対応について:文部科学省にある以下の通達。

各大学等におかれては、本情報を今春渡日予定の留学生に周知するとともに、予定していた時期に渡日できない場合に備え、補講や履修登録に関する柔軟な対応(期間の延長等)、必要となる修学上の配慮措置についても具体的に検討し、当該学生に幅広く情報提供するよう、よろしくお願いします。

なお、4月に新たに渡日予定の国費外国人留学生及び(独)日本学生支援機構「留学生受入れ促進プログラム」採用者については、出身国・地域に関わらず、新型コロナウイルス感染症に起因して所定の期間から遅れて渡日する場合や、秋渡日など奨学金支給期間を変更する場合も奨学金の受給ができるよう柔軟に対応することとしておりますので、このことについても当該学生にお伝えいただくようお願いいたします。詳細につきましては、国費外国人留学生制度は当省から、留学生受入れ促進プログラムは(独)日本学生支援機構から別途ご連絡いたします。

報道に対するアリな反論、ナシな反論

厚生労働省、自民党広報、内閣官房国際感染症対策調整室がTwitterの公式アカウントで「羽鳥慎一モーニングショー」の報道に対して反論している。私は厚生労働省のツィートは検証可能な形(いつ、だれが、何を、誰に、どのくらいを明示した形)で提示しているため、建設的な反論で今後もばんばんやっていくべきだと思うが、自民党広報および内閣官房国際感染症対策調整室のツィートは立場の表明であり、少なくとも政府の公的機関である内閣官房国際感染症対策調整室が公式アカウントで発するものではないと思う。

検証可能な形での反論はメディア側が「そんなことない」と考えたら、提示されたデータが的を射ているものか、適切なものかを検討して(場合によってはさらなるデータの提示を要求して)より、課題となっているものごとを明らかにすることができる。一方で、立場の表明はひたすらに分断を深めるだけで、何も進まない。

厚生労働省アカウントの厚生労働省3月4日「羽鳥慎一モーニングショー」の報道への対応

上記のツイートに対する「羽鳥慎一モーニングショー」再反論
www.huffingtonpost.jp

この事実を厚労省の担当者に聞いたところ、5日のTwitterの「マスクの優先供給を行った」という表現については「言い過ぎた表現だった」と認め、「行っている」あるいは「開始した」が正しい表現だったと釈明した。

また、同ツイートで「都道府県の備蓄用マスクの活用や日本医師会や日本歯科医師会のルートを活用した優先配布の仕組みをお知らせしています」と発信していたことについて担当者は「訂正したい。そんなことは国会でも言っていない」と回答したという。

発言の意図については、「日本医師会・日本歯科医師会に協力してもらってマスク配布の仕組みを医療関係者に広く知ってもらいたいというつもりで書いた」と改めて説明した。

これについて、コメンテーターを務めるテレビ朝日の玉川徹氏は「『優先供給を行った』というのは、日本語として普通に読めば、“過去形”(の表現)ですから、全部(マスクが)届いているんだと受け取るのが当然で、そういう風に受け取りますよね。日本語として間違っているので、訂正せざるを得ないでしょうね」とコメント。

さらに、「『医師会を通じたルート』という話ですが、そんなルートないんですよ。ないので、あたかもそんなルートがあって活用するという話も訂正してもらわなければならない」と同省からの謝罪を要求。

自民党広報アカウントの3/5「羽鳥慎一モーニングショー」の報道への対応

内閣官房国際感染症対策調整室アカウントの3/5「羽鳥慎一モーニングショー」の報道への対応



自民党広報アカウントの3/4「Nスタ」の報道への対応

せめて、自民党は世界保健機関(WHO)の見解を支持しますとか言わないと単なる揚げ足とりでは?

転載:新型コロナウイルス(COVID-19)感染症クイック・チェックポイント

2020年2月21日付けで日本感染症学会日本環境感染学会が理事長名義で出した「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)―水際対策から感染蔓延期に向けて―(元PDFはアクセス過多でつながりにくいので別サイト)」より「一般市民の皆様へ ―クイック・チェックポイントー」と「一般市民の方々へ ―共有してほしい情報と行動―」を転載。

指定感染症としての認定、武漢市からの邦人の移送、施設およびクルーズ船における経過観察措置など、水際対策の実施は国内の感染者数の急激な増加に一定の抑制効果を示してきました。(中略)このような状況の中で、地域の状況を見ながら、地域単位で感染対策のフェーズを水際対策期から感染蔓延期へ移行させていくことが必要になってきます。(中略)

本ウイルス感染症の特徴として、その感染性とともに肺炎を合併する頻度の高さが明らかになってきました。致死率は依然としてSARSより低いものの、高齢者・基礎疾患保有者における肺炎の合併は生命を脅かす重篤な状態につながる可能性を高めます。このような感染症の蔓延期においては、重症例に焦点をあてた医療の実施が重要な戦略となってきます。(中略)

新型コロナウイルス感染症が地域によっては感染蔓延期を迎える中で、医療関係者はもとより、一般市民の方々におかれましても、その対応と行動を変えていく必要があります。以下にそのポイントを解説させていただきます。

(「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)―水際対策から感染蔓延期に向けて―」の冒頭部より)

一般市民の皆様へ ―クイック・チェックポイントー

1.注意すべき事項
  • 自分自身の健康管理を行ってください。体調が優れないときは朝・夕の体温測定を行いましょう。
  • 病院や施設での面会を控えましょう。高齢者や基礎疾患のある人に感染症をうつさないようにするためです。
  • 人が多く集まる室内での集会等の参加は必要なものに限りましょう。
  • 公共交通機関において、つり革、手すりなどの他人が触れる場所に触れた後は、鼻、口、目などを触らないようにしましょう。不特定多数の方の触れるものに接触した後の手指衛生が重要になります。
  • 会社、学校、自宅に着いてから手洗いをしっかり行いましょう。
  • 時差通勤によりラッシュアワーを避けましょう。
  • 東京オリンピック・パラリンピックに向けて準備してきたテレワークによる自宅勤務も活用しましょう
  • 37.5℃以上の発熱、咳、倦怠感がある場合には、出来るだけ会社、学校は休み、自宅での安静・静養を行いましょう。
  • 37.5℃以上の発熱、咳、倦怠感がある場合に、人と接触する場合は、咳エチケット(マスク着用)を行い、手で鼻、口を触った場合は、手洗いを行いましょう。
  • 体調不良者(発熱、咳など)に接する場合には、マスクを着用しましょう。
2.注意すべき症状
  • 37.5℃以上の発熱、咳、倦怠感などに加え、呼吸苦、息切れの症状がある場合
  • 37.5℃以上の発熱、咳、倦怠感などの症状が、5 日以上持続する場合
3.受診行動

37.5℃以上の発熱、咳、倦怠感などに加え、呼吸苦、息切れの症状がある場合や37.5℃以上の発熱、咳、倦怠感などの症状が、1 週間以上持続する場合は、帰国者・接触者相談センターなどに相談してから病院(一般外来で受診せず、帰国者接触者外来)を受診しましょう。

この時、マスクを着用し公共交通機関の利用は避けましょう。

4.高齢者または基礎疾患のある方
  • 毎日、朝・夕、体温測定を行いましょう。
  • 多くの方が集まる集会場等へ行くことは控えましょう。
  • インフルエンザワクチン、肺炎球菌ワクチンを接種されてない方は医療機関で接種を受けましょう

一般市民の方々へ ―共有してほしい情報と行動―

1. 感染症の臨床的特徴が明らかになってきました。

本ウイルスに感染を受けた人の多くは無症状のまま経過するものと思われます。感染を受けた人の中で潜伏期間(1〜12.5日)ののち一定の割合で発熱・呼吸器症状(咽頭痛、咳)などの感染症状が認められるようになります。発熱や呼吸器症状が1週間前後持続することが多く、強いだるさ(倦怠感)を訴える人が多いことが特徴とされています。

いわゆる風邪、あるいはインフルエンザであれば、通常は3〜4日までが症状のピークで、その後改善傾向がみられますが、新型コロナウイルス感染症では症状が長引くことが特徴です。4日を過ぎても発熱が続く、特に1週間目においても発熱が続く場合、息が苦しい、呼吸器症状が悪化する、などを認めた場合には肺炎の合併が疑われます。すぐに帰国者・接触者相談センターにご相談ください。

2.1 週間以内に症状が軽快しそうであれば、自宅での安静で様子をみます。

新しく出現した感染症の場合には、しばしば重症例だけが取り出されて解析されることになります。しかし実際には、感染をうけても無症状~軽症の人が何倍も多く存在すると考えられています。

新型コロナウイルス感染症においても同様のことが考えられます。おそらく風邪様症状から軽い上気道炎ぐらいの軽症例が多数存在するものと思われます。このような症例は1週間で症状が軽快します。特に治療の必要はなく、自宅で安静にしておくことで十分です。

ただし、家族など身近の方への感染に気を付け、家族と接するときのマスク着用と、こまめな手洗いや手指消毒を心がけましょう。

3.1週間以上熱が続く、呼吸苦・呼吸器症状の悪化がみられる場合には医療機関へ

一方で、4 日〜1週間ほど経過しても熱が続いている、呼吸が苦しくなってきた、咳・咽頭痛が悪化している、などが見られた場合には帰国者・接触者相談センターに相談する必要があります。

1週間未満であっても高熱がみられるようになった、呼吸困難がみられるといった場合には肺炎の合併を疑います。速やかに帰国者・接触者相談センターに相談して帰国者接触者外来のある医療機関を受診してください。また、その際マスクを着用するなど周りへの感染に気を付けてください。

4.高齢者・基礎疾患を有する人は外出を控える、人込みの中に入らない。

新型コロナウイルス感染症は高齢者や基礎疾患がある人で重症化しやすいことが明らかとなっています。幸いにも、小児においては重症例が少ないことが報告されています。

重症化につがなる基礎疾患としては糖尿病、心不全、腎障害・透析患者や、生物学的製剤、抗がん剤、免疫抑制剤投与患者などがあります。また妊婦においても上記患者と同様に本ウイルス感染症にかからないような対応が必要になります。

人が多く集まる場所では、本ウイルスを持っている人と遭遇する機会が高まります。今回問題となったクルーズ船や老人介護施設・病院などは高齢者や免疫不全患者が多数集まる場所です。新型コロナウイルスの持ち込みには十分注意しなければなりません。

5.現在、実施されているウイルス検出のための検査(PCR 法)には限界があります。

新型コロナウイルスは、主に咽頭や肺で増殖しますが、インフルエンザに比べてウイルス量は少ないと考えられています。PCR 法という核酸検査で増幅してウイルスを検出する方法が診断に応用されています。最初の検査で陰性で、2 回目の検査で陽性となった症例も報じられました。

インフルエンザに比べて1/100~1/1,000 といわれるウイルスの少なさは、検査結果の判定を難しくしています。とくに早い段階でのPCR 検査は「決して万能ではない」ことをご理解ください。

関連ツイート


手洗いの仕方