メモ:選手宣誓とナチス式敬礼

面白い。「なぜフェンスが建てられたのかわかるまで、決してフェンスをとりはずしてはならない」の原則にしたがって検討した上で、止めるのかやめないのかを決めたら良い。

lineblog.me

上のブログや「どうして選手宣誓のときに右手を挙げるのですか?」では、ナチスドイツの国威発揚に利用された1936年のベルリンオリンピック由来なので、選手宣誓時の右手をあげる仕草はナチス式敬礼由来なので辞めようと提案されている。

一方、こちらのエントリーだと選手宣誓が復活した1920年のアントワープオリンピックの時点で右手を上げているとのこと。
chbbplus.hateblo.jp

ナチス式敬礼の由来はローマ式敬礼で、ローマ式敬礼は多分あの時代の地中海世界における儀式由来と予想されるので、同一起源のものが別々の経路で採用された可能性が十分ある。

ベルリンオリンピックの前から、日本で右手を上げる姿勢で選手宣誓が行われていることがわかれば、何由来なのかはっきりするわけなのだけど、以下の文献によると選手宣誓自体は1924年の明治神宮体育大会ですでに採用され、行われていたとのこと。
ci.nii.ac.jp

この紀要論文の著者らが属している聖母女学院の図書館には明治神宮体育大会報告書と写真帳が第1回から第13回大会まで保管されているとのことなので、この写真帳にある選手宣誓時の写真をみればベルリンオリンピック前に右手を上げたスタイルの選手宣誓が日本で行われていたのかどうかがわかる。

ちゃんと由来を明らかにした上で、国際的慣例と日本での伝統を勘案して続けるか止めるか検討したら良いと思う。

メモ:共謀罪とFATFの日本への勧告への対応

以下のツイートを見かけた。


上のツイートで挙げられているPDFは2014年のもの

以下の記事で指摘されている話。
www.sankei.com

ここで懸念事項となっているもののうち通称「パレルモ条約」への批准を除いてはすでに法律が成立している。今回の「共謀罪」の構成要件を改めて「テロ等準備罪」を新設する改正組織犯罪処罰法はマネーロンダリング話とは関係ない(はず)。
business.bengo4.com

我が国も、前述のFATF勧告に対応すべく国内法制を整備してきたものの、2008年に行われた第3次対日相互審査では多くの指摘がなされていたところであり、2014年6月には指摘事項に早急に対処すべき旨のFATFによる声明が公表される事態となった 。

この事態を受けて、同年9月から開かれた臨時国会では、改正犯罪収益移転防止法1 、改正テロ資金提供処罰法 2、国際テロリスト財産凍結法3がそれぞれ成立し、国内におけるAML/CFT関連法の整備が進展することとなった 。同年10月に行われたFATF会合では、かかる状況を評価する旨の声明が出されている。

パレルモ条約への批准に関しては、日弁連が現状でも批准できると述べている。

条約の批准について

  • 国連が条約の批准の適否を審査するわけではありません。
  • 条約の批准とは、条約締結国となる旨の主権国家の一方的な意思の表明であって、条約の批准にあたって国連による審査という手続は存在しません。
  • 国連越境組織犯罪防止条約の実施のために、同条約第32条に基づいて設置された締約国会議の目的は、国際協力、情報交換、地域機関・非政府組織との協力、実施状況 の定期的検討、条約実施の改善のための勧告に限定されていて(同条第3項)、批准の適否の審査などの権能は当然もっていません。

少なくとも2014年2月のFATFの勧告についてはパレルモ条約への批准を除いては、今回の「共謀罪」の構成要件を改めて「テロ等準備罪」を新設する改正組織犯罪処罰と関係ないのではないかと思う。

なお、私は以下の本を読んだこと、および、Session 22でたびたび取り上げられた国会での質疑の音声を聞いて、もうちょっとまともに議論しろよと感じているので反対の立場。

リンク:バーナンキ前FRB議長の日銀での講演の翻訳

ベン・バーナンキ「日本の金融政策に関する考察」 – 道草で翻訳されているバーナンキ前FRB議長(以下、バーナンキ)の件で以下のような記事がでている。
diamond.jp

バーナンキ前FRB議長は以下のように言っているので「金融政策」だけではだめだったと言っているわけで「金融政策」がダメだったとは言っていない。

特に、初期の文章の中では、金融政策のみで可能なことと、どれほど財政政策との連携が必要になるのか、その限界をはっきりと見定めていなかった。

ベン・バーナンキ「日本の金融政策に関する考察」 – 道草より)

以前もクルーグマンの皮肉を見出しにした新聞記事があったけど、それと同じに見える。
next49.hatenadiary.jp

バーナンキの日銀での講演の要旨の翻訳。
hirokimochizuki.hatenablog.com

バーナンキ vs 日本経済新聞

政府が経済財政運営の基本方針(骨太の方針)を閣議決定した。財政健全化の目標として、2020年度の国・地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)の黒字化に加え、国内総生産(GDP)に対する公債残高の比率引き下げも明記した。新目標が財政健全化の先送りにつながるようなことはあってはならない。

PBの黒字化は、その年度の政策的経費を、借金に頼らずにその年度の税収などの収入でまかなえるようにする目標だ。PBが黒字になっても、過去に発行した国債などの借金返済が残るので、PB目標は財政再建の一里塚にすぎない。その後は1000兆円を超す国・地方の借金を減らし累積赤字を縮小させる必要がある。
安倍政権は財政健全化から逃げるな :日本経済新聞)より

バーナンキの提案は財政ファイナンスして、社会福祉や再雇用訓練に充てよう

しかしながら、状況は完全に満足いくものではない。インフレ率は2%にほど遠く、確実に目標に向かっているとは言いがたい。そして、過去数年使われたツールは先ほど話した通り限界に達しようとしている。特に、利子率は短期だけでなく全ての期間構造を通じて、実質的な下限近くにあり、現在のインフレ率が上昇する気配がないので、予想インフレ率は低いままに留まっている。この時に当たって、日銀がさらにやるべきことは明らかではないが、将来の可能性を排除するべきではない。今この時になって、残されたツールキットは何か?
~中略~

日本政府が所得政策を採用しようとしまいと、政府は、総需要がより高い賃金と物価を支えるのに十分だと言うことを確信させなければならない。再び、数年経って、インフレ率が回復していなかったら、どのようなことができるのか? 中央銀行単独の行動が限界に達している時、普通は財政政策が代替策になる。だが、日本では既に存在する高水準の債務残高対GDP比の結果として、財政政策でさえ制約に直面しているのかもしれない。そうなると、金融政策と財政政策の連携の話に行かざるを得ないと私は考えている。そうした連携策を実行する手段は数多くあるが、実行可能なアプローチの鍵となる要素は、(1) 政府が新たな支出か減税プログラムを約束する事と、(2)そのプラグラムが日本の債務残高対GDP比に与える影響を相殺するのに必要な手段を実行すると中央銀行が約束することです。

私が言ったように、この約束を実現するには様々な方法がある:~中略~ 金融政策で財政プログラムをファイナンスするという約束です。~中略~

ここでは、この仮想的な財政プログラムの内訳には立ち入りません。ただ、このプログラムをアベノミクスの3本目の矢である構造改革を前進させるために使うと有益であると指摘しておきます。そして、構造改革は長期的な成長率を上げるために欠かせないものです。例えば、再訓練プログラムや所得補助は非効率部門を改革する際の抵抗を和らげることができるし、照準を定めた社会福祉は女性や高齢者の労働参加を増やすのに役立てることができる。
~中略~

しかしながら、私の提案の文脈は、一般大衆はインフレ率をオーバーシュートさせるという中央銀行の主張を信じる必要はなく、政策当局者や法案立案者だけが信じればいいと言うことです。おそらく、政府が、マクロ的な状況からそれが正当化できる時に、拡張的な財政プログラムを承認しないことの鍵となる理由は、結果として国の債務が積み上がることを心配するからです。もし法案立案者が、金融政策はその積み上がった債務を相殺するために使われると信じるなら、彼らはもっと積極的に行動するかもしれない。さらに言えば、彼らは、金融政策は財政政策と相反するものでなく、財政乗数を増やし、「対価に見合う価値」以上のものをもたらすものだと理解するでしょう。~後略~
ベン・バーナンキ「日本の金融政策に関する考察」 – 道草より)

試験監督に駆り出される立場からみると負担が増えるだけの新センター試験

6月14日までパブリックコメントが求められている。TwitterのTL見て「あっ、書かなきゃ」と思い、資料読み始めたけど、今のセンター試験をより複雑にする方向に進化しているだけなのでがっくり。これで、英語の試験も今まで通り実施するとなったら一体この大騒ぎは何の意味があったのか。

search.e-gov.go.jp

このたび、その進捗状況として、平成29年5月16日に①「「高校生のための学びの基礎診断(仮称)」実施方針(検討素案)」、②「「大学入学共通テスト(仮称)」実施方針(案)」及び③「平成33年度大学入学者選抜実施要項の見直しに係る予告(案)」について、現時点での検討状況を公表いたしました。(※)

以下、「「大学入学共通テスト」実施方針(案)」より

3.実施主体
共通テストは利用大学が共同して実施する性格のものであることを前提に、大学入試センター(以下「センター」という。)が問題の作成、採点その他一括して処理することが適当な業務等を行う。

上の記述はどういうことかといえば、試験会場の提供や試験監督、補助要員、事務員などを出すのは大学ですよと言っている。すなわち、現在と一緒。

「国語」、「数学Ⅰ」、「数学Ⅰ・数学A」については、「8.で見直しを行うマークシート式問題」に加え、記述式問題を出題する。

※ 共通テストの英語試験の取扱いについては、引き続き、以下の2案について大学・高等学校等の関係団体等の意見を聞きつつ検討する。

≪A 案≫
平成32年度以降、共通テストの英語試験を実施しない。英語の入学者選抜に認定試験を活用する

≪B 案≫
共通テストの英語試験については、制度の大幅な変更による受検者・高校・大学への影響を考慮し、平成35年度までは実施し、各大学の判断で共通テストと認定試験のいずれか、又は双方を選択利用することを可能とする。

○ なお、認定試験では対応できない受検者への対応のための共通テストの英語試験の実施については、別途検討する。

B案だとセンター試験に英語が引き続き生き残る。外国語科目の韓国語、中国語、フランス語、ドイツ語はいったいどうなるの?

10.実施期日等
○ 共通テストの実施期日は、1月中旬の2日間とする。
○ マークシート式問題と国語、数学の記述式問題は同一日程で、当該教科の試験時間内に実施する。
○ 成績提供時期については、現行の1月末から2月初旬頃の設定から、記述式問題のプレテスト等を踏まえ、1週間程度遅らせる方向で検討する。

1月に一発勝負なのは変わらない様子。でも、記述式が増える分、受験生への合格通知は遅れる模様。

CBTの導入については、引き続きセンターにおいて、導入に向けた調査・検証を行う。平成29年度については、問題素案の集積方法の検討及び集積等を行う。
この成果も踏まえ、平成36年度以降の複数回実施の実現可能性を検討する。

CBTになった場合も、大学で実施されそうで大変にアレ。

追記:リスニングの効果は?

センター試験にリスニング試験が加わったことでリスニング力が上がったかどうかの評価をしている報告は無いっぽい。CiNiiで探して関連ありそうなのは以下の文献。

  • 内田照久, 大津起夫:大学入試センター試験への英語リスニングテストの導入に至る歴史的経緯とその評価, 日本テスト学会誌 9(1) 77-84 2013年6月. (著者のページよりダウンロード可)

センター試験への英語リスニングテスト導入の成果の検証のため,現在,大学入試センターにリスニング・テスト検証研究会が設置され,九州大学や筑波大学の協力の下,検討が進められている(大学入試センターリスニングテスト検証研究会, 2012)。九州大学では,平成17~23年に学部1年生を対象に実施した英語学力試験TOEFL-ITPに基づき、九州大学の入学者集団の英語成績の推移を検討している。また高校生・大学生を対象とする調査も別途行い,高校生及び大学入学者の英語成績推移について検討している。さらに,高校の英語科担当教員を対象とする調査も行って,高校の教育状況,高校生の学力状況についての検討も進めている。

これまでの結果としては,個別大学や高校における標準化されたテストの結果の範囲では,センター試験でのリスニングテスト実施前後の英語学力については,際だった変化は認められていない。しかし,高校英語教員のアンケートでは,リスニング力やスピーキング力は大半が向上したと判断されていた。

単発なので比較はできないけど、この結果からするとリスニングがセンター試験に入っている意味はあるのかも。

「読むこと」「聞くこと」は、CEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)A1上位からA2下位レベルに集中。

ガソリン車産業の終わり、その次の始まり

どの分野(人文学であっても)大学生および大学院生は以下のページにリンクのある「シリコンバレーD-Labプロジェクトレポート」について、ひととおり目を通すべき。たとえば、これから10年くらい都市部に住んだり、勤めたりするなら、運転免許の取得を考えなしても良いかもしれない(教習所代数十万円を節約できる)。
www.meti.go.jp

私は別件でこれに似た話を聞いたのだけど、コネクテッドカーについてちょっと誤解していた。従来の匠の技で複雑な部品をくみ上げるガソリン車に対して、モーターやバッテリーなどのコモディティ部品をつなぎ合わせて車を作るからコネクテッドカー(connected car)なのだと思っていたら、情報ネットワークにつながるからコネクテッドカーなのね。

日本のガソリン車産業がガラッとなくなる(変わる)というのも、かなりな影響があるけど、車の台数が大きく減るということは他の産業にも影響が来る。ちょっと、ブレーンストーミング的に考えてみる。

  • 保険業界(別件の講師がこれを主張)
  • 駐車場業(都市部だったら、とりあえずコインパーキングにして遊休地減らすというやり方されているけど、車減るならこの運用は無駄になる)
  • 都市部の住宅関連産業(人口密度が多いほどUber系の車が利用しやすくなる&駐車場分を住面積に費やせる)
  • 発電機・大規模蓄電池業界(災害が多い日本では、停電を考慮した設備が必要)
  • 宅配業から配達ロッカー運営業へ(任意の場所に車でとりにいけるのならば、配達ロッカー倉庫作って、そこに来てもらえばよい。自宅のドアの中まで運んでもらうのは別料金に)
  • 趣味の「ガソリン車運転」:運転場、免許制度、保険、カスタムカー
  • 移動できる自室としての「クルマ」に代わる何か:自動運転ならば窓がなくても良い。完全隔離密室可能。
  • 自己表現の一形態としての「クルマ」に代わる何か
  • 利用目的、利用人数、利用状況に応じた車:子供のお迎えカー、恋人カー(デートカー)、帰省カー、買い出しカー、病院カー、飲み会カーなど
  • 保育園・幼稚園・小学校への親の送迎 → 子供が親を会社にお迎え(保育士・教員が子供をを自動運転車に乗せると車がが会社に親を迎えに来る。親の仕事は強制終了)
  • 在宅ワークから在車ワークへ:コネクテッドカーの中がオフィス。朝は子供と一緒に乗車して保育園へ。会社に行く必要がなければ保育園脇で仕事。打ち合わせが必要な時はその近辺に移動。お迎え時刻には再び保育園へ
  • 移動教室:運転しなくてよい。事故が起こらないのだから、移動時間を学びの場にしてしまう。学校を授業しながら発、途中で実地見学、授業しながら学校へ。あるいは東京から1時間かけて近隣県に帰る人を相乗りにして授業しながら共通のターミナルへ移動。出勤時と帰宅時が学びの時間に。

だめだ、頭固い。思いつかないなぁ。