「あんたに言われたんだから、やるんじゃないんだからね」問題

タイトルはおちゃらけたけど、実際問題根深い問題。自分たちの判断ではAが良いと思っているところに外部からAをやれと言われる。このときに、Aを実施すると外部の意見に従ってAを行ったと第三者に判断され、今後の運営に問題が生じる懸念がある。なので、今回はAをやらないと判断をくだす。そんな面子問題とか無視しなさいよと思うけれども、こういう類型はたくさんある。

政府・与党からは早期解除をけん制する声も上がっていた。「見送った場合、政治的な圧力が強い時は、日銀は自主的に金融政策を決定できないという誤解を与えかねない」(3月、水野委員)ことも解除を押し通した背景にあった。
日経新聞:日銀が06年1~6月の議事録公開 福井氏、緩和解除押し通すより)

木曜日のSession 22の特集でゲストの原武史 さんが言っていた理屈。天皇陛下からの要望に従い、憲法や法律を変えたということになれば、天皇が政治的な働き方をしたということで憲法で述べられている「象徴天皇」という理念に反する。これは、国民(つまり、政府)が議論をしたうえで、これこれこうこうと皇室典範や憲法を変えましたと天皇陛下に報告する形にするのが筋。まだ、明らかではないけど、当人が体つらいので退位したいという意向であったとしても、日本国憲法の枠組みを保つために個人の意思はあえて無視するという形にしないといけない。これは上の事例の応用編に思える。
www.tbsradio.jp

生活保護とか障碍者福祉とか、社会的にマイノリティーになる側でかつ、制度の対象となっている側が「この制度は~に不備がある」と制度の不満を言う時、「確かにそうだ。変えた方が良い」と思っても、当事者が何か文句を言ったらそれが変更されるという前例ができるから今回はやらないみたいな構図がいろいろとある感じがする。

「そういう要望があったのは確かだが、彼ら/彼女らは妥当な独立的にかつ妥当な判断の下で~を行った」と証明してくれる第三者の存在が必要なんだろうなぁ。

指導教員はコミュニケーションの仕方を工夫しなければいけないという話

以下のエントリーにコメントをいただいた。当該エントリーの件に関しては、コメントに書かれているような方法でのコミュニケーションは当時とっていなかったけれども、コメントに書かれているようなつらい思いをした方もいるということでコメント転載。

next49.hatenadiary.jp

以下、当該コメント(書式の追加はnext49)

今年、君は卒論に苦しんだね。君が卒論に苦しんだ理由は自分でも分かっていると思うけど、常に外部に正解を求めたことにあるんだ。私が「どうして、それが正しいと思うの?その理由を教えて。」と聞くと、いつも君は表情を凍らせて黙ってしまったね。何度も何度も「研究には正解とか不正解とかない。誰も答えを知らないから研究になっているんだ。だから、自分の主張をとりあえず述べて、相手の反論が正しいと思えてから自分は間違っていたと考えれば良いんだよ。」と伝えたのだけど、最期最後まで君は自分の主張の正しさを自分の言葉で言えず、常に私の保証を求めたね。はっきり言ってそれが私にとっては本当につらかった。
価値の判断基準が自分の外にある人間は表現者になれない - 発声練習より)

なんて言ってますが、本当にそうなんでしょうか?学者の方って自己の正当性をとても評価していらっしゃるけど、生徒へ向けて言っていることが片言で日本語の体をなしていなかったり、まともに伝わる言葉でなかったりしますよね。
今回の場合も指導教員のあなたが、学生に「どうして、それが正しいと思うの?その理由を教えて。」と聞いたのではなく、ただ一言「本当に?」といっただけなのでは?


それなら学生の表情をこわばらせるのは至極もっともなリアクションです。学生は嘘をつくつもりなどさらさらないのになんの根拠なくあなたに疑われたわけですから。


このケースの場合あなたの価値観は重要じゃありません。大事なのは正常な形式で日本語をあなたが発することができるかどうかです。こういうケースはあなたに限らず多くの学者が経験していることと存じますし、また、一度や二度の経験じゃないでしょう。


あなたのコミュ力が標準的な人間以下にあることが主要な問題で、あなたの論理は全て己のコミュニケーションの下手さ加減を、自身よりふた回り以上年少の人間に押し付ける卑劣な論理です。

君が雑談ならば私とも明るくおしゃべりできるのに、研究の話となった瞬間に凍り付いてしまうのは、雑談は自分の感情をベースに話せるので自信を持てる(自分の感情だもの、正しいも正しくないもない)のに対して、研究の話は自信がないからだよ。

どうして、自信がなかったのかといえば、たぶん、間違うことに対して恐怖をいだいているからだと思うよ。何で間違うことに対して恐怖を抱いているのかというと、まだ君には精神的な背骨が育っていないからだと思う。君は、自分の価値判断の基準を外部に委ねており、自分の内部にそれがない。君が自分の価値判断の基準だと思っているのは、外部に依存した「優等生な自分」「良くできる自分」という役に立たない基準なんだ。
価値の判断基準が自分の外にある人間は表現者になれない - 発声練習より)

なんて言ってますが、これも研究が行き詰まって今後の指針について学生が話しにきたのを、あなたは何もしないで何も教えることができないから、学生に自信がないとか言って、「あなたの研究能力が指導教官として不十分である」ことを学生の心理的要因に転嫁しているだけですよ。


学生と接するうちはあなたは研究者ではなく教育者として、学生の保護者の資金により大学に雇用されているのだから、学生が、あなたの判断にではなく、研究者として教育的意見を求められるのは当たり前かと。
もしあなたがそれを辛いと感じるのであれば、大学の研究者として、素養がなく資格がないのでしょう。あたりまえのことを辛いと思うなら、仕事を辞めてみて転職するのも一つの手と思いますよ。


かわいそうなので少しあなたの生い立ちについて考えてみました。あなたは学生の頃(と言っても大学教員として学校にいるのだからある意味であなたは未だに現役の学生です)から人とつるむことができず、一人で勉強をして、一人で研究をしてきた。大学教員がゼミを開き学生にオープンな意見を期待している場面であっても、あなたは頑なにだんまりを決め込んだ。今でもそれは変わらない。年長・年少関わらず、あなたは外部の期待や意見に関わらず、常に自分中心の世界で、誰にも理解されない状況を作っていた。そして、今、誰にも理解されない状況が仇となり学生の指導が行えない。あなたの所属する職場(大学)は優秀な学生が多く、放っておいても自力で研究できる力を持っている。しかし、人と積極的にコミュニケーションの取れる体育会気質の人間もいる。彼は地道な努力により入学したため、大学のいろは何て知る由も無い。当然、大学の研究を知るため、その第一線にいていた教員に教えを請うだろう。しかし、あなたは、あなたに意見を期待されている時でも常にそれを無視して、内省に執着してきたため、もはやあなたには他人を指導できるだけの言葉はない。


あなたは誰かから接せられるだけで、あなたのコミュニケーション能力の不足を認識してしまい、学生を憎むようになった。


まあ、そんなあなたでも学生は我慢したりスルーして卒業しているので、やはりあなたの指導教員としての能力は顧客、もしくは利用者たる学生からも期待されていないのでしょう。


何もしないでお金もらえているのだからもう少し社会(お金をあなたに与えるものたちの集団)に感謝してあげてもいいと思いますけどね。だって、あなたの研究って学生の研究がベースになっているのだから。


あっステレオタイプを想像していただけなので間違って判断していたらすみませんね。

得られる教訓

少なくともここ10年くらいの私の感覚では「本当に?」も「どうして、それが正しいと思うの?その理由を教えて。」もどっちも理由を尋ねているので大差はなく、何の感慨もなく理由を説明してしまう。でも、学生の立場で、しかも、理由を根掘り葉掘り聞かれた経験が少ない人にしてみれば「本当に?」は言葉足らずで、「どうして、それが正しいと思うの?その理由を教えて。」と聞くべきなんだろう。


当時は、学生に近かった年齢も、だんだん学生の親御さんに近い年齢になってきているので(もっといくと学生の祖父母に近くなる)言い方には気を付けたいと思う。

統計処理言語RでPDFを出力するとプロット点がqになる件の対処方法

R で PDF 出力した図を Inkscape で開くとプロット点が q になる | 永田 晴久にかかれている現象の解決方法がBoops boops: Importing pdf R plots into Inkscape: the "q" problemのコメント欄で示されていた。ポイントは"useDingbats=F"とのこと。実際うまくいった。

dat <- sample(1:1000,100)
pdf("plot.pdf",useDingbats=F)
plot(dat)
dev.off()

このPDFファイルをInkscapeで読み込んでも問題なかった。

確認した環境は以下のとおり。

  • Ubuntu 12.04 LTS
  • R version 2.14.1
  • Inkscape 0.48.3.1 r9886

Pokemon GOで良い生活習慣を推奨するカスタマイズを

このニュース聞いたときにスタンドバイミーかと思った。

www.asahi.com

で、Pokemon GOがどういうものかわからなかったのだけど、イングレスのポケモンラッピングみたい。

www.pokemon.co.jp

「ポケモンGO」は、任天堂と「INGRESS」のNiantic社がタッグを組んだ最新作。
位置情報を使うことで、現実世界でポケモンを捕まえたり、バトルしたりすることができるゲームとなっている。
ポケモンGO 配信日などの事前情報 - GameWithより)

ポケモンは長い歴史があるので現在大人になっているひとたち(20~30代)にも魅力的なコンテンツではあるけど、主たるターゲットは未成年、特に小学生と中学生だと思う。なので、イングレスと同じような仕様にしてしまうと、イングレスでは起こらなかったトラブルや事故が発生してしまう恐れがある。

ingresswiki.wiki.fc2.com

d.hatena.ne.jp

weekly.ascii.jp

Pokemon GOが原因とみなされるような重大事故・事件などが起こると任天堂が吹き飛ぶ恐れがあるので、任天堂はぜひ注意深く日本版(さらにいうとアジア版)をカスタマイズして、リリースして欲しいところ。

個人的には以下を考慮して欲しいかなと。

  1. 夜のポケモン狩りをさせないようなデザインにする
  2. 学業をさまたげないようなデザインにする
  3. 家族のやりとりを促進させるようなデザインにする
  4. 気象状況と合わせて、外出を促したり、外出を控えさせたりするようなデザインにする

年齢別デザインをする

ポケモン世代の大人と小中学生を同じデザインの下でゲームに参加させたら、(デザインが大人よりで)事故がおこるか、(デザインが小中学生よりで)大人が離れるのかのどちらかの結末しか見えない。なので、年齢別デザインを導入して社会人は時間や距離に対する縛りがない代わりにポケモンを得るのがちょい厳しい、小中学生は時間や距離の縛りがある代わりにポケモン得るのが比較的楽という風にしてはどうか(どうデザインするのかはさっぱりだけど)。スクエアエニックスのドラゴンクエストXは小学生への配慮があったような(プレイガイド|目覚めし冒険者の広場

小学生~中学生の生活範囲と社会人の生活範囲は全然違うので、距離に対する評価を同じにすると社会人プレイヤー有利になってしまうので配慮した方が良いと思う。

夜のポケモン狩りをさせないようなデザインにする

いくら日本の治安がよいとはいえ、夜中に小学生がポケモン求めて、人気のない場所(商業施設を除くランドマークは基本夜間は人気がすくない)に行くのは危ない。なので、夜の20:00~5:00まではポケモンが手に入らないようにデザインしてはどうかと思う。小中学生が対象なら(大人でも)21:00~5:00までスマートフォンの電源を切っておくと、レアポケモンが手に入りやすくなるようにするとかデザインするのも良いと思う。

あとは、18:00~20:00は親と一緒だとポケモンが入手しやすくようにするとかして、夕方も一人で外に出さない(ついでに家族で散歩)するようにしたらよさそう。

あとは早起きするとメリットあるようにすると夜のポケモン狩りを防げるかも。ラジオ体操もあるし、日本は早朝メインにレアポケモン出した方が良い。

学業をさまたげないようなデザインにする

私の年代だとカードダスとかビックリマンチョコシールなどであったけど、夢中になっているときにはそれを学校まで持っていってやろうとするのが一般的。スマートフォンは連絡用として持たせる人もいるだろうから、学校でPokemon GOを続けて、親や学校から目の敵にされることもあると思う。なので、8:00~12:00、13:00~16:00とか学校の時間割に合わせてスマートフォンの電源を切るとポケモン入手に役立つアイテムが手に入るとかにしておくと、よいのではないかと。

日常生活を壊さないようなデザインにしないと、長く遊んでもらえない。社会人だって仕事中にイングレスしちゃう人がいるのだから、小中学生なんてもっとする。

あと、通学時にスマフォの画面に注目して危ない目に合う(特に自転車通学の中学生~大学生は危ない)のを避ける工夫も必要。

家族のやりとりを促進させるようなデザインにする

小中学生に時間や距離制限をかける代わりに、家族登録している場合はコミュニケーションすると朝とか夕方にメリットがある仕組みにしたら、利用者拡大できるし、Pokemon GOを通して交流がはかれて、ゲームに対する批判をやわらげられるんじゃなかろうか。親の歩行距離を子供にプレゼントできるとか(「お父さん・お母さん、1駅分歩くようにしてよ!」とかあるかも)。

気象状況と合わせて、外出を促したり、外出を控えさせたりするようなデザインにする

イングレスのときにあった大雪の日や台風の日は人が少ないからあえて攻めるみたいなことが起こらないようにしないと。台風くるたびに「ポケモンとりに外を見てくる」と言って亡くなる小学生がでてくる。

スマートフォンと対応させているので、ポケモンも気象条件が悪いときには家で静かにしている設定を導入した方が良い。直近では、35度越えたときにはポケモンも涼しいところでゆっくりしているという設定にしたほうがよい。ポケモン狩りに行き熱中症には割けるべき。

おわりに

運動不足が問題になり、バーチャルに馴染みすぎて身近な現実をみないことが多いわれわれにとって、地理情報を利用したゲームは良い点も多い。でも、小中学生を対象とする場合には、注意払わないと提供会社もプレイヤーも危ない。

リアルタイムゲームという側面をうまく利用して、このゲームをやると良い生活習慣が構築できるというデザインにすれば、提供会社もプレイヤーも、プレイヤーの家族もうれしいと思うのでぜひうまい具合に作ってほしい。がんばれ、任天堂。

木村草太さんが言う政府が自衛隊を違憲としない理路

Session 22の7月4日放送回で憲法学者の木村草太さんが言う政府が自衛隊を違憲としない理路を聞いてびっくりした。
www.tbsradio.jp

Session 22で説明していた理路は、毎日新聞の対談でも書いてあった。

井上 私は護憲派の憲法学者を(自衛権を認めていない)原理主義的護憲派と(自衛権を認めている)修正主義的護憲派に分けていますが、私の憲法解釈は原理主義的護憲派と同じです。私の考えは、9条1項では自衛権は否定していない。つまり、国際紛争や国益追求の手段として戦争はしないが、自衛のための戦力の保持・行使は禁じていない。


しかし、2項により自衛のためでも一切の武力行使を禁止している、というものです。従って、個別的自衛権の枠内なら自衛隊と日米安保は許されているというのは、まったく詭弁(きべん)だと思う。自衛隊は世界有数の武装組織です。戦力ではないと言い張ることはあり得ない。米軍は世界最強の戦力であり、日米安保のもとでは日本が侵略されたときは自衛戦争を共同で戦うわけで、これを交戦権の行使ではないというのもあり得ない。


木村 私も9条の解釈はまったく同じ。違うのは、9条の例外を定めた条文が憲法にあると考えるかです。例えば医者が手術でおなかを切るのは刑法の傷害罪の構成要件に当たるが、例外として正当業務行為を認める規定があるので犯罪にならない。安倍政権を含めて従来政府は9条の例外を認める根拠として憲法13条=2=を挙げている。国民の生命、自由、幸福追求の権利を保護する義務が日本政府にあるから、それに必要な最小限度の実力を持てる。私はこの解釈は成り立つと評価をしている。ただし、集団的自衛権は日本への主権侵害の着手がない段階での武力行使なので、生命などへの具体的な危険がなく、13条では根拠付けられません。

毎日新聞:憲法と安全保障を問う 対談 井上達夫・東京大大学院教授、木村草太・首都大学東京教授より)

木村草太さんの説明する従来政府が自衛隊が意見でないとする理路。てっきり、9条2項の「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」について自衛隊は軍じゃないからという理屈なのだと思っていた。

  1. 憲法第9条2項「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」とあるので戦力の全面放棄がうたわれている。よって、これに従い集団だろうが個別だろうが自衛権は認められない。
  2. 一方、憲法第13条「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。 」とある。
  3. 国外の武装組織が攻めてきたときに国は憲法第13条は守ることができなくなる。
  4. 9条第2項で認められないが、第13条を最低限満たすために、最小限の自衛権(個別自衛権)は保持しなければならない。
  5. 以上の理屈により専守防衛の戦力として自衛隊が合憲となる

他の解釈。

9条解釈

学説では、1項で「永久に放棄する」と定める範囲について、(1)あらゆる戦争と武力行使を放棄している(2)「国際紛争を解決する手段としては」と条件付けていることから、侵略目的では戦争と武力行使は禁止されているが、自衛のためには認められる−−という二つの説がある。そのうえで、2項で一切の「戦力」の保持を禁じているため、(2)も否定されるという説がある。

政府は、1項の解釈では(2)の立場をとり、2項でも戦力保持を否定していると解釈しているが、自衛隊については合憲としている。国家固有の権利として自衛権があり、備えとして「必要最小限度の実力」は認められ、その範囲の防衛力である限り、「戦力」にはあたらないという解釈だ。これには最新鋭装備を整える自衛隊の実態にそぐわないとの指摘もある。

また、2項冒頭の「前項の目的を達するため」を引いて自衛目的の戦力保持は可能との解釈(芦田修正論)もある。

自衛権行使について政府は、9条の文言から「武力の行使を一切禁じているように見える」とする一方、憲法前文(国民の平和的生存権)や13条(幸福追求権)を踏まえ、緊急時には「必要な自衛の措置」を行うことを認めている。この解釈は2014年の閣議決定でも踏襲されている。

毎日新聞:憲法と安全保障を問う 対談 井上達夫・東京大大学院教授、木村草太・首都大学東京教授より)

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